会計史学会年報
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Print ISSN : 1884-4405
明治期におけるわが国家計簿記書の展開
篠藤 涼子
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2020 年 2020 巻 39 号 p. 45-57

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抄録

1895(明治28)年,学校教育制度において,女子の教科内容として家計簿記という用語が公的に使用された。本稿は,俸給生活者に対する家計簿記書の展開に焦点をあて,明治期の女子に対する教科書との関わりから検討をした。結果として,明治初期,台所の支出をその収入の範囲内で収めることを目的としていた出納教育は,家計簿記という用語が公的に使用された1895(明治28)年以後は,女子の職務として家計全般を記録する家計簿記へと展開したことが明らかとなった。明治期は,簿記の普及期にあり,簿記知識人によって最も早く家計簿記と表題する著書が出版された。家計簿記書は,簿記知識の普及を目的に,複式簿記を用いて家計全般を記録対象としていた。家計簿記を家計全般の記録と定義した場合,明治後期における日本の家計簿記書は,家計全般の収支管理を女性が記帳することを啓蒙した。そ して家計簿記の内容は,家長からの割り当て分を妻が記帳する収支計算から,教育機会を得られた社会階層や当時の社会的経済的状況から判断する限り,社会的に地位の高い夫の家計では財産計算へと展開した。

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© 2020 日本会計史学会
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