抄録
本稿は,比較史的なパースペクティブのもとで日本における独立監査に関するプロフェッション形成を歴史的に叙述することを通じて,日本の監査プロフェッション化の独特性を明らかにすることを企図している。わが国の公認会計士制度は,第二次大戦後,占領下において,証券取引法に基づいて提出される財務諸表の監査証明の担い手としての新たな役割を果たすために創設されたものである。本稿では,プロフェッションと国家との関係性に焦点を当てながら,公認会計士制度が創設されたプロフェッション形成プロセスを描写する。プロフェッションの比較史的観点から,プロフェッションへの参入および懲戒のあり方をめぐる規制のモード,および,プロフェッション団体の会員制のあり方とその国家との関係の2点に絞って議論・分析を行なう。最後に,そこから得られるインプリケーションとこの研究のもたらす意義に関する結論を述べる。