地球的規模,地域的規模の各種の環境変化によって,サンゴ礁の基盤構成生物であるサンゴの減少が危惧されている。そのため,今後の環境変化に対して,サンゴがどのように応答できるのかを評価することが急務となっている。これまでの飼育実験において,サンゴの環境変化に対する応答を,成長率,死亡率,光合成活性など,様々なパラメーターに着目して調べた研究や総説は多く存在する。その一方で,ある環境要因の段階的変化に対して,サンゴがどのような順応的応答を示すのか,また順応の閾値を過ぎた時にどのような応答を示すのかに関して,体系的にまとめられた報告は限られている。また,集団内の遺伝子型組成が変わることによって環境要因に対する応答が変化する,適応の可能性についても,サンゴにおいてはあまり注目されていなかった。本総説では,複数の環境変化(水温変化,酸性化海水,栄養塩負荷,光環境変化,その他)に対するサンゴの順応機構について,これまでの知見を概説する。また,環境変化に対する適応の可能性についても触れ,今後の研究の展望について述べる。