表層型メタンハイドレート資源開発では,環境影響評価の一環として,メガベントスの調査が行われている。調査海域では,殻長約80 mmの深海性二枚貝の死殻は確認されているが生貝は採集されていない。この要因として,堆積物の採集深度と量の不足が考えられる。本研究では,ROVにより,繰り返し採泥が可能な採集装置を4種類考案・試作した。それらを深海底において試験したところ,繰り返しの採泥ができ,その内の1種類では25回の採泥を行い,殻長約80 mmのオウナガイ類生貝が採集された。本研究で試作した採集装置は,二枚貝など深海の埋在性メガベントス調査・研究に有用になりうることが示唆された。
著者は,太平洋の海水における微量金属9元素(Al, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, Pb)の多元素濃度分析を行い,これらの元素の鉛直断面分布を基に,海水中の微量元素を制御する生物地球化学プロセスを研究している。著者らによる研究と既往研究のデータを合わせて,ベーリング海や日本海を含む太平洋全体の表層や亜表層の水平分布から,陸源物質や人為起源物質が海洋に与える影響を調査した。中深層においては,栄養塩型元素とリン酸濃度,見かけの酸素消費量(AOU)を用いて,栄養塩型元素(Ni, Cu, Zn, Cd)もスキャベンジングの影響を受けていることを明らかにした。さらに,深層での水平分布から,海底堆積物が海水中の元素に与える影響を検討した。