三宅島の南西岸にある阿古漁港と南東岸にある坪田漁港の日平均水位差と,北西太平洋海洋長期再解析データセットの三宅島の西の点における流向・流速との関係を調べた。水位差と,流速の2次関数と流向の余弦関数の積との相関係数が最大となるのは,流向が35度(東北東と北東の間)のとき1,90度(北)のとき0となる余弦関数の場合であった。最小二乗法により求められた回帰式では,流向35度,流速1m/sのときに13cmの水位差が生じる。回帰式からの残差のうち大きなものは,数日~10日程度の短期変動によるものであった。
沿岸域における海水中の二酸化炭素(CO2)に関する研究は進みつつあるが,海水中での時空間変動や大気との交換量など不明な点は多い。本研究では瀬戸内海および周辺海域で測定したデータをもとに,海水中二酸化炭素分圧(pCO2)の空間的特徴とその要因を明らかにすることを目的とする。全ての海域において春季のpCO2は夏季よりも平均して約100 µatm以上低く,水温の影響を強く受けていた。大阪湾は両季節とも最も低く,高い基礎生産によるpCO2消費が示唆された。夏季の海峡部は非海峡部よりもpCO2が平均して64 µatm高く,湾灘部の底層に蓄積された高pCO2水塊が,海峡部底層へ水平移流し混合により表層へ輸送されたためだと考えられる。大気海洋間のCO2 fluxを見積もったところ,春季においては全ての海域で吸収域だったが,夏季においては外洋,豊後水道,紀伊水道,大阪湾は吸収域であり,他の瀬戸内海は放出域だった。瀬戸内海の海峡部と湾灘部の連なった構造が,季節による吸収・放出の変化をもたらしている。
海洋研究開発機構は,日本近海の水温や流れといった海の中の状態の2か月先までの予測をもとにした「海中天気予報」を2001年から現在まで継続的に提供してきました。本稿では,海中天気予報の仕組み,研究やアウトリーチへの活用,今後の展望についてできるだけ簡素に解説しました。具体的には本稿を入門・応用・展望編に分け,入門編では予測の仕組み,予測精度を向上させる観測データ,用途に応じた多様な予測の方法について紹介しました。応用編では,ブログとYouTubeによる予報の配信,(気象の)天気予報への活用,世界の海の2年先までの予測への展開について解説しました。展望編では,予測の誤差を考慮した技術開発と海洋生態系の予測への取り組みを紹介しました。海中天気予報は,日々の情報配信と技術開発を続けることで,国連海洋科学の10年が目指す「予測できる海」と「万人に開かれた海」へ貢献していきます。