大気と海洋間での生物地球化学的相互作用や,その応答は,気候や環境の変化を引き起こしたり,引き起こされたりする.私は地球規模の物質循環の観点から,海洋大気エアロゾルの化学組成変動とその挙動,そして海洋への影響について研究してきた.アジア大陸に起源を持つ鉱物粒子や人為起源エアロゾルが,北太平洋上へ春季を中心に広く輸送され,地球規模の気候変化の放射収支に影響を与えていることを示唆した.またエアロゾルが輸送されている間に海洋大気境界層内で生じている化学的,物理的変質過程や除去過程を明らかにした.海洋に沈着するこれらの物質が,海洋表層での化学的,生物的過程を通して,海洋生物活動に影響を与えていることを確かめた.一方,海洋大気エアロゾル化学組成が,海洋生物や物理環境によって変化することを示した.海洋と大気と気候間でのリンケージの定量的な理解を,さらに深化させるためには,海洋科学と大気科学の連携が不可欠である.