海の研究
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原著論文
西部北太平洋亜熱帯海域における台風の影響を受けた可能性のある植物プランクトン群集組成と沈降粒子
石田 洋 古澤 一思牧野 高志石坂 丞二渡邉 豊
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2016 年 25 巻 2 号 p. 17-41

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抄録

西部北太平洋亜熱帯海域の定点(北緯22.5度,東経131.8度)で,2004年から2006年の各年の夏季に,調査地点の500 km 以内に台風が通過した後の10日以内におこなわれた植物プランクトン群集組成の調査結果を解析した。2006年の台風はEWINIARとBILISで,最接近時の移動速度がそれぞれ2.8と4 m s-1であり,2004年のKOMPUS(6.5 m s-1)と2005年のHAITANG(7.9 m s-1)に比べて遅かった。人工衛星による観測では,2006年のこれらの台風が通過した後,海表面水温が低下し,クロロフィルaが調査地点を含む広範囲において増加していた。また,植物プランクトンが増加しており,優占種はPlanktoniella solで,細胞数は4×107 cells m-2であり,2004年(1×105 cells m-2)と2005年(5×104 cells m-2)に比べて2-3桁高かった。さらに,シアノバクテリアおよびバクテリアの炭素態現存量も,2004年と2005年に比べ約2倍高かった。同じ地点で2002年12月から2005年7月まで実施したセジメントトラップによる沈降粒子観測では,台風の影響と考えられる変動はみられなかった。

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© 2016 日本海洋学会
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