日本海洋学会誌
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中部太平洋における窒素固定細菌の分布について
丸山 芳治多賀 信夫松田 治
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1970 年 26 巻 6 号 p. 360-366

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抄録

海洋における窒素固定細菌の分布生態, 生理活性等を知る目的で. 中部太平洋において2種類の無窒素培地すなわち糖と無機塩類のみよりなる培地 (A) と, これに微量栄養素を添加した培地 (N) に生育する細菌につき調査を行なった.
155°W線に沿い50°Nから15°S海域における海水中の窒素固定菌 (A, N菌) は, 40°Nと5°N付近に最も多く (海水100ml中102~103), 50°N, 20°Nおよび赤道以南海域に少なかった. この緯度による細菌数の変化は特にA菌に顕著に認められた. 一般にN菌はA菌と同程度から10倍位多く, 従属栄養菌 (P菌) 数はN菌数の10倍程度であった.
細菌の垂直分布は非常に不規則で深度によりかなりの相異が認められた. また北方海域で2,000~3,000mの深度に103~104の高い細菌数がみられ, 赤道付近では表層よりかえって深いところに多くの細菌が観察された.
駿河・相模湾の細菌数は中部太平洋海域の細菌数の平均10倍以上であった.
プランクトン付着細菌について南太平洋の数調査点で調べたがプランクトン沈澱試料1ml当り106~109 (海水100mlに換算して101~104) の細菌が計数された. 海洋で窒素固定をしていると報告されたらん藻のTrichodesmiumsp. に付着している細菌のほとんどがN・A菌であり, 1コロニー当り2,000~3,000のA菌が検出された.
次にこれらの, A, N菌を更に純粋分離し, 菌学的に調べると多くの異なった種類の菌が認められ, またこの分離菌を培養しアセチレン法で窒素固定活性を測定すると, これまで調べた菌の多くは陸性のAzotobacterr等に比べると極めて微弱であるがエチレン生成が認められた.

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