発達過程にある風浪を線形的に取扱えば, 風浪のエネルギーの方向分布は, 大気の乱流圧力変動によって一義的に決定される. このような線形近似は, 風浪のスペクトルで見れば極大周波数より低周波側でしか成立しない.
極大周波数より高周波側の, いわゆる平衡領域では, 表面における大気の乱流圧力変動とは独立に, 波数間の相互干渉の結果がエネルギーの方向分布に影響を与える筈であるが, いまかりに周波数の全領域にわたって, 線形モデルから期待されるように, 風浪のエネルギーの方向分布と乱流圧力変動との問に一次的な関係があると仮定しても実際と大差がなければ, これをもって, 風浪の方向スペクトルの実際的なモデルとすることができる.
大気の乱流圧力変動のスペクトルはPRIESTLEY (1966) が陸上で経験的に求めたものを使用する. 上述の仮定によって, これから風浪のエネルギーの方向分布に関する種々の統計量を導くことができる.
既存の経験式と比較するために, とくに, LONGUETHIGGINS (1963) が求めた, 角分布の標準偏差, スペクトルのとがり度や峯の長さを示すパラメターなどを計算し, 又, 超音波流速計によって観測された結果との比較も行なった.
特徴的なことは, 観測から求めた風浪のエネルギーの方向分布が, 大気の乱流圧力変動の経験式から導かれたものと周波数の全領域を通じて実際上一致するとみなして差し支えない程よく似ているということであって, この経験式は高周波側に於いては, また既存の経験式とも大勢に於いて一致する.
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