日本海洋学会誌
Online ISSN : 2186-3113
Print ISSN : 0029-8131
ISSN-L : 0029-8131
対馬海流の分枝現象
第1部データ解析
川辺 正樹
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 38 巻 2 号 p. 95-107

詳細
抄録
対馬海流は日本海中央部において複雑な蛇行路をとるのに対し, 対馬海峡付近では比較的整然とした流路をとり, しばしば3本の分枝流が見出されてきた. しかし, その構造や変動についてはほとんどわかっていない. そこで, 水温・塩分・潮位データを使って, おもに対馬海峡付近での対馬海流の性質を調べ, 次のような結果を得た.
第1分枝 (日本沿岸分枝) の存在は, 塩分分布によって少なくとも3月から8月に認められる. 第3分枝 (東鮮暖流) は常に存在している. 一方, 第2分枝 (沖合分枝) は6月から8月にかけての夏季のみ存在する.
主密度躍層は, 深さ150mから200mで日本側の陸棚上のゆるやかな海底斜面に交叉している. 第1分枝は, おおよそこの交叉位置より岸側を占めており, 第2分枝は交叉位置付近から沖側に位置している.
釜山・厳原間, 厳原・博多間の潮位差によると, 表面流速・流量の季節変化は, 対馬海峡東水道では非常に小さく, 西水道では大きい. しかも, 西水道で表面流速・流量の増大する期間は, 第2分枝の存在する期間とよく一致している.
以上の結果は, 海底地形や密度成層, および対馬海峡西水道での流入流速・流量の季節変化が, 第2分枝の形成に重要な役割を果たしていることを示唆している.
著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 日本海洋学会
前の記事
feedback
Top