微生物の媒介によるマンガン酸化物の成長過程

抄録

マンガン酸化バクテリアの媒介によってマンガン酸化物が沈殿している東海大学海洋科学博物館の地下海水給水系に, スライド・ガラスを多数設置し, その上に付着するマンガン酸化バクテリアおよび酸化物を時系列的に調べ, マンガン酸化物の成長過程の形態学的および化学的研究を行った。最初, バクテリアがばらばらにスライドガラスに付着し, その後集菌する。それらは集塊状になった後溶菌する。溶菌と共にマンガン酸化物が沈殿を開始し, ドーナツ状, ドーム状を経て, カリフラワー状に成長する。ドーナツ状になった段階で, 酸化物表面に, マンガン酸塩(manganate)特有の蜂の巣状構造が現れる。マンガン酸化物の成長速度は1.8×10^-2mmyr^-1であり, Mn(II)の酸化速度定数(k_Mn)は, k_Mn=6×10¹⁹mol^-4l⁴d^-1であった。マンガン酸化物中のCoおよびNiの濃度は, 沈殿後取り込み現象(post-depositional uptake)により, 時間と共に増加するが, Cuにはこの傾向は見られなかった。