2001 年 10 巻 6 号 p. 561-572
深層循環を調べるために行った全球診断モデルと日本東方海域での海洋観測の結果について記述した。診断モデルを用いることで水温と塩分の観測データから3次元的な流速場を客観的に算出できることを示した。それらをもとに海水粒子の追跡を行うことで, 海盆単位での深層水の起源について考察し, 多くの海盆において北大西洋起源の深層水が卓越することを指摘した。また, 日本東方の係留計データとCTDデータを解析することで, 海溝部にみられる西斜面で南下, 東斜面で北上する流れの構造について明らかにした。海溝を北上する流量は10Svを越え, 30, 34, 38°Nでの流量の違いから, 東からの深層水の流入や黒潮続流下層の再循環の存在の可能性について指摘した。