海の研究
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定期船ADCPによるsemi-regular samplingデータを用いた調和解析手法の検討 : 津軽海峡東口における潮流と残差流の評価
黒田 寛磯田 豊大西 光代岩橋 雅行佐藤 千鶴中山 智治伊藤 集通伊勢田 賢一西澤 慶介島 茂樹外川 織彦
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2004 年 13 巻 6 号 p. 553-564

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抄録

津軽海峡東口周辺における実際の定期船ADCP流速データを用いて,黒田・磯田(2004)が提案した年周斯変動成分に関する調和解析上の注意点に基づき,どれだけ確からしい潮流と残差流(季節変動)が見積もれるかを検討した。日単位のデータサンプリングに依存した調和解析上の最大の問題点は,K1とP1分潮からSa分潮と同じ周期のエイリアシングが生じるため, K1,P1,Saの3分潮を同時に分離することが不可能なことである。ここにおいて, Sa,K1の2分潮を選択し, O1,M2,Q1,N2の4分潮を加えて調和解析を行なった結果,構造的で卓越したK1分潮流を見積もることができた。しかし,残差流に含まれる可能性があると推定されたP1分潮の最大振幅は,残差流の年周期変動の振幅に対して無視できず,P1分潮を調和解析によって分離する必要がある。そこで,津軽海峡東口周辺の検潮所におけるP1とK1分潮の潮位の振幅比と位相差の関係を潮流に適用した調和解析を再び行ない,過去に行われた短期の係留流速観測結果と比較して,両者の共通点と相違点を整理した。更に,このような方法で見積もられた潮流成分を除去することで,津軽海峡内における流れの季節変動を提示することが初めて可能となった。

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© 日本海洋学会
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