海の研究
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「川口修・山本民次・松田治・橋本俊也: 水質の長期変動に基づく有明海におけるノリおよび珪藻プランクトンの増殖制限元素の解明」に関するコメント
角皆 静男
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2005 年 14 巻 5 号 p. 609-611

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抄録

川口ら(2004)は, 毎月1回ずつ長期にわたって測定した有明海表面水中の硝酸塩, リン酸塩, ケイ酸塩の濃度を解析して, ケイ酸塩は, 珪藻プランクトンの増殖制限元素となっておらず, 有明海では角皆(1979)のケイ素仮説は成り立たないと述べている。しかし, ケイ素仮説は, ケイ酸塩がある濃度以下になると, 優占種が珪藻から渦鞭毛藻などに移り変わるというものである。さらに, 角皆(2002)は, ケイ素仮説を浅い海底や河川から常に栄養塩が補給されている有明海に拡張し, 2000年度冬にノリが不作になった原因を推測した。それは, この年, 陸からのケイ酸塩の負荷量が異常に多く, 珪藻赤潮がいつまでも続き, ノリにいくべき硝酸塩やリン酸塩がなくなってしまった結果とするものである。珪藻はケイ酸塩がなければ生育できないが, 硝酸塩やリン酸塩がなければあらゆる植物が生育できないのは当然である。しかし, 川口ら(2004)は, これらにはまったく触れず, 筋違いのケイ素制限説にすり替えて批判している。

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