抄録
鹿児島湾は湾内の平均水深に比べて浅い湾口を有している。このような湾での流動特性を知るため,過去に湾口断面で実施した流速観測の結果を解析した。その結果,(1)1980年,1981年2月の混合期では,上層流入・下層流出が57%の頻度で現れ,(2)1980年,1981年6月の成層期ではパターンは逆に上層流出・下層流入が55%の頻度で存在した。次に,流入量,流出量を流速断面積分により求めた。その結果,(1)流入のピークと流出のピークは一致していた。(2)東側上層流入流速の大きい日は断面における流入量も流出量も大きくなった。観測期間内に生じた5回のイベント(急激な流入)に対応する流入量の総和は455億トンであり,イベント時以外の総流入量は260億トンであった。イベント期間における1日当たりの流入量は16,2億トンであり,イベント時以外の1日あたりの流入量は7.7億トンであった。このことより湾の海水交換にはイベントの影響が大きいことが分かった。