2003 年 29 巻 2 号 p. 170-173
メタノールクロスオーバーの抑制を目的として,対イオン導入によるイオンクラスター径を制御した修飾Nafion膜を作成し直接メタノール形燃料電池における発電特性について評価した.(CH3)4N+修飾膜ではイオンクラスター径は未修飾Nafion膜の4.80nmに対し4.44nmへと縮小し,メタノール透過流束は未修飾膜比較で44%抑制され,プロトン伝導度6.4S/mの荷電膜特性を得た.Nafion117膜を用いた発電試験より,加湿温度363K,単セル温度363KでVOCは0.658V,ISCは392mA/cm2を得た.383K以上のセル温度では膜内水分不足による膜のプロトン伝導度の低下に起因する直列抵抗成分増大が見られた.(CH3)4N+修飾Nafion膜ではプロトン伝導度低下によって電流密度は低下したが,開放起電力は363Kにおいて0.683V,383Kにおいて0.732Vへと増大した.プロトン伝導度減少のため電池特性の低下がみられたが,メタノール透過抑制について対イオンによる内部固定電荷修飾効果が得られた.