抄録
アルミ再生工程から排出されるアルミドロスおよびMgCl2廃液を用いて,無機陰イオン交換体であるハイドロタルサイト(以下,HT)の合成を行った.得られたCO32−型HTおよびその焼成物を用いて,水溶液中で陰イオン種を形成するAs(III), As(V), Se(IV)およびCr(VI)の除去を行った.
CO32−型HTおよびその773 Kでの焼成物によるAs(III)の除去量は,HT焼成物を用いる方がCO32−型HTよりも高い.As(V)の場合,焼成物とCO32−型HTとの間にAs(V)除去率の大きな差は見られない.ヒ素の場合と同様に,CO32−型HTおよび焼成物を用いたSe(IV)およびCr(VI)の除去が可能である.HT焼成物によるAs(III)の除去では,HT中のOH−とAs(III)との陰イオン交換反応よりも,再水和時にAs(III)が直接的に取り込まれる反応が支配的である.As(III)除去操作後のpHはHTのpH緩衝作用によって約11に調整されるので,初期pHによらずAs(III)の除去率は約90%と高い値で一定となる.CO32−型HTの焼成温度が673 Kのとき,HTの再水和に伴うCr(VI)の取り込み量が最も高い.廃棄物から得られたHTは陰イオン除去能とpH緩衝作用を併せ持つ優れた有害重金属の除去剤として利用できる.