化学工学論文集
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分離工学
硝酸-水系の低濃度域における気液平衡に及ぼす塩効果を利用した硝酸の濃縮
山本 秀樹前田 領平山口 修平北口 剛司芝田 隼次
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2005 年 31 巻 5 号 p. 331-337

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抄録
共沸混合物に不揮発性の塩を添加すると気-液平衡関係が変化して,相対揮発度に大きな影響をあたえる現象は,気-液平衡関係に及ぼす塩効果として広く知られている.硝酸-水系は共沸混合物であり,通常の蒸留操作では濃縮が不可能である.本研究では,半導体製造工程や金属表面処理工程から排出される硝酸廃液からの硝酸の回収を目的として,硝酸-水系の定圧気-液平衡関係に及ぼす硝酸塩の添加効果を,この溶液の共沸組成(x=0–40 mol%)範囲で測定した.添加する塩はこれまで報告例(Ohe and Yokoyama, 1969)が少ない硝酸アルミニウム,硝酸マグネシウム,硝酸カルシウム,硝酸リチウムおよび硝酸ナトリウムなどの硝酸塩を用いた.いずれの硝酸塩を用いた場合も,気相中の硝酸濃度が増加する塩析効果を示し,塩を全溶液重量の30–50 wt%添加することにより,共沸点を消滅させることが可能であった.このことにより,低濃度硝酸廃液(共沸点以下の組成)からの蒸留による硝酸分離が可能となった.実験では,硝酸リチウムを50 wt%添加して希薄な硝酸水溶液から硝酸の蒸留分離および硝酸の濃縮について試験した結果,濃度5 mol/dm3の硝酸水溶液から約14 mol/dm3以上(収率72.2%)まで濃縮することが可能であった.
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© 2005 公益社団法人 化学工学会
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