抄録
前報(Fujita and Miyahara, 2005)で,化学反応装置やバイオリアクターなどで問題となる細胞状泡沫層の消泡を目的とし,非イオン性界面活性剤水溶液を用いて,その安定性を検討した.これに続き本報では,四種類の陰イオン性界面活性剤水溶液および五種類の陽イオン性界面活性剤水溶液を用い,多孔板上に形成される細胞状泡沫層の成長および崩壊過程を観察した.その結果,陰イオン性および陽イオン性界面活性剤水溶液に対して類似の二種類の泡沫層成長パターンおよび類似の二種類の崩壊パターンを見出した.さらに,Hartland and Barber(1974)およびBarber and Hartland(1975)の提案する薄膜化速度式を用い,細胞状泡沫層が破裂する際の臨界膜厚さを求めた.得られた陰イオン性界面活性剤水溶液の臨界膜厚さは陽イオン性界面活性剤水溶液のそれより小さく,泡沫層は安定であった.また,非イオン性界面活性剤水溶液の場合と異なり,臨界膜厚さは,モートン数の関数とならず,表面粘度数,キャピラリー数およびHLB値の関数として相関された.