化学工学論文集
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プロセスシステム工学,安全
フィードバック制御下にあるプラントの操作端および測定端の動的プロセスモデルに基づいた異常診断
柚木 健一
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2011 年 37 巻 2 号 p. 181-191

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抄録

フィードバック制御下にあるプラントの異常診断システムを提案する.このシステムは運転中のプラントの制御量や操作量のトレンドから,操作端や測定端の異常を検出し,さらにどの操作端あるいは測定端に異常が発生したのかを自動的に診断するもので,プラントオペレータの意思決定を支援することを目的としたものである.実プロセスとその動的プロセスモデルとの間の挙動の不一致は異常診断の手がかりと成り得るが,モデリング誤差による誤診の危険が付きまとう.この不一致は,真に異常由来のものと,モデリング誤差由来のものの両方から起因する.既往の研究では,観測される不一致からモデリング誤差由来の成分を除去するフィルターを通して,真に異常由来の不一致のみから異常診断を行う方法を提案している.しかしこのフィルターは,除去対象空間内にあるものは,たとえ程度の大きな異常の徴候であっても完全に除去してしまうため,逆に重要な異常を見落とす諸刃の剣ともなっている.これとは別に,ある特定のモデリング誤差に限定した研究も報告されているものの,操作端と測定端の診断が別々に分かれていて,これらの間で異常原因の区別が付けられない欠点を抱えている.本研究では,既往の研究が抱えるこのような課題に対し,モデリング誤差を考慮し,なおかつ操作端と測定端の異常診断を同一の方法で実行することが可能であり,さらに診断結果に優先順位を与えることが出来ることを特徴とする異常診断システムを提案する.

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© 2011 公益社団法人 化学工学会
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