化学工学論文集
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[特集] ダイナミックな現象の解析とプロセス強化への展開
超音波計測法によるアスペクト比の小さいTaylor-Couette渦流れの速度計測
河合 秀樹木倉 宏成有冨 正憲
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2011 年 37 巻 2 号 p. 85-90

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抄録

マイクロリアクターや溶媒抽出法への応用が知られるTaylor-Couette渦流れ(TVF)は,流動場のプロセス強化法として注目される技術の一つである.しかし,化学反応や相変化を伴う混相流の流動場は複雑であり,その解明は容易ではない.また,装置のコンパクト化についてもプロセス強化の重要なテーマであるが,内外円筒間距離(d)と作動流体の高さ(H)の比で表されるアスペクト比(Γ)が小さいTVFでは,上下境界端に生じるEkman境界層の影響のため,同じReynolds数でも多重安定モードが存在し,複雑な流れに分岐することが知られている.このようなTVF混相流の解析はプロセス設計において重要な指針を与えるが,特に固液系では流れの大半が不透明であり,可視化が阻まれて,その流動場を把握することは難しい.
そこで,本報告では超音波による流動計測法として,超音波時間領域相関法(Ultrasonic Time Domain Correlation method; UTDC)を導入し,回転Reynolds数(Re=dR1Ω/ν)が1,500以下の単相流TVF流れ(R1:内円筒半径,Ω:内円筒角速度,ν:流体の動粘度),に適用させて,時間平均軸方向速度成分の軸方向分布を測定した.また,この測定結果をより高精度なUVP(Ultrasonic Velocity Profiler)法と比較し,軸方向速度分布において良好に一致することが確認された.さらに,トレーサ粒子量を増加させて不透明懸濁液(スラリー)を模擬させ,その速度を計測した結果,希薄系の範疇ではあるが不透明な懸濁液でも計測可能なことがわかった.UTDC法は比較的廉価であり,取り扱いも簡便なことから,今後現場の計測法として普及が期待される.

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© 2011 公益社団法人 化学工学会
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