化学工学論文集
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環境
日中の都市ごみ焼却飛灰からの有害微量重金属元素の溶出特性
張 文卿張 鳳君菅沼 秀樹加藤 茂小島 紀徳
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2013 年 39 巻 4 号 p. 391-398

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抄録

日本の中規模ストーカー炉および中国3都市での大規模流動層炉からの都市ごみ焼却飛灰からの有害微量重金属元素の硝酸水溶液による溶出特性を比較検討した.中国の灰は,粒子径,かさ密度とも日本のものと比べ大きく,また含有元素組成も異なる.中国の灰では日本の灰に比べて透過速度が大きく日本の灰に比べ短時間のうちに以下の現象が発現するとの違いはあるものの,日本の灰に見られた主要・少量元素の溶出によりもたらされるpHの低下に伴うブレークスルー(透過流速の急激な増大)という現象が,中国の灰にも見られた.
これらの4種類の灰を用いて有害微量元素 (Pb, Cd, Cr, Mo) の溶出濃度変化の測定を行った.元素の特性,含有率および元素起源の違いによる価数等の影響はあるが,また灰の種類により透過速度が大きく異なるなど灰の違いによる影響の違いはあるものの,いずれの元素についてもブレークスルーに代表される透過速度の変化に普遍的に大きく影響された.Pbは本試験で扱う微量元素の中では最も飛灰中の含有率が高く,両性金属であることを示す溶出挙動を示した.Cdは中性付近から溶出が見られた.中国灰からのPb, Cdの溶出率は日本の灰よりかなり低く,大粒径で透過速度が大きく試験時間は短く,一方粒子内での物質移動抵抗は大きいことが影響したと考えられる.CrはPb以上にアルカリ性での溶出を示したが,強い酸性でも溶出率が低かった.Moについては,アルカリ性での溶出がみられた後,徐々に溶出濃度の低下が見られた.
水酸化物の溶解性データを用いて考察することで,Cdの中性付近からの溶出がよく説明された.またブレークスルー現象は,主としてAlあるいは3価のFeイオンがカラム上部で溶出し,カラム内でのアルカリ成分の溶出によるpH変化によりカラム下部で水酸化物が析出し,さらにカラム溶出液の酸性化に伴い再度溶出することによりもたらされたものと推定された.

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© 2013 公益社団法人 化学工学会
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