リチウムイオン電池(以下,LIB)はハイブリッド車や電気自動車など高容量かつ高電圧を要する製品に用いられており,LIBの需要は増加しつつある.LIBにはLiやCoなどのレアメタルが用いられている.しかし,これらのレアメタルは,世界的な需要の拡大や資源の偏在性から入手が難しくなっている.使用済みLIBからレアメタルを分離・回収して,再利用することは重要である.
本研究では,使用済みLIBを焼成,粉砕,分級を行ったふるい下産物からのLiとCoの回収プロセスの構築について検討を行った.LIBのふるい下産物から純水によりLiを選択的に浸出した後,溶媒抽出法と晶析剥離法によりLiをLi2CO3として回収した.さらに,純水による浸出残渣から1.0 mol/dm3 HNO3を用いてCoの選択的浸出を行い,浸出液中のCoをシュウ酸塩沈殿法により分離・回収した.浸出工程でLiおよびCoを選択的に浸出し,晶析剥離法とシュウ酸塩沈殿法を用いて回収することにより,LiとCoの回収プロセスを簡略化することができる.