2020 年 46 巻 2 号 p. 13-17
本研究では,太陽電池廃パネルからのIn(III)とGa(III)をpHの違いによって選択的に分離・回収するための吸着材を開発するために,3個のカルボキシル基とアルコール水酸基をもつクエン酸を天然高分子のキトサンに導入し,レアメタルの吸着選択性について評価した.キトサンをクエン酸溶液に溶解させ,熱を加えることでクエン酸を導入したキトサン誘導体(CAC)を合成した.CACのカルボン酸量はNaOHの吸着等温線から決定され,5.77 mmo g−1であった.この吸着材を用いて1.0 mol dm−3 NH4NO3溶液からのIn(III),Ga(III),Zn(II)およびCu(II)に対する吸着選択性についてバッチ法により検討した.低pH領域でIn(III)およびGa(III)がともに高い吸着率を示し,吸着過程ではこれらの相互分離はできないが,共存すると考えられるZn(II)やCu(II)との選択的な分離を示した.In(III)およびGa(III)の吸着容量はそれぞれ0.72 mmo g−1および0.98 mmo g−1であった.脱離実験は塩酸ではIn(III)およびGa(III)ともに100%脱離できたが,水酸化ナトリウム水溶液ではGa(III)のみが100%脱離され,In(III)はほとんど脱離されなかった.このことは脱離の段階でIn(III)/Ga(III)の相互分離ができることを示しており,CACは太陽電池廃パネルや亜鉛精錬残渣からのIn(III)およびGa(III)の選択的分離・回収がpH変化によって可能であることがわかった.