抄録
充填性や流動性の良い粉体特性を有したセファゾリンナトリウム (化学式 : C14H13NaN8O4S3) の多形β形結晶を晶析することを目的として実験条件の検討を行った.その結果, 物理的, 化学的に安定なβ形の結晶を取得するためには, 水-ソルミックス (EtOH-IPA-アセトンの混合溶媒のことで, 各々の比は85%, 5%, 10%) 混合溶媒系で晶析温度の違いによる結晶の溶解度差を利用した晶析法が有効であることを見いだした.また, セファゾリンナトリウムに構造が類似したジアミノモノカルボン酸構造を有した化合物, またはL-リジン, L-アルギニンのようなアミノ酸を微量添加することによって, 板状結晶から針状晶が凝集した球形の凝集結晶に晶癖を調整する方法が確立できた.本晶析法によって医薬品のバイアル充填, カプセル充填に好適な結晶を得ることができた.さらに, 浮遊撹絆動力比Z因子をパラメータとして用いることによって, 粒径と粒径分布制御およびスケールアップが可能なことを明らかにした.