化学と教育
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漆と伝統工芸(<特集>伝統産業に学ぶ : 新素材・バイオテクノロジーのルーツ)
熊野谿 従
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1988 年 36 巻 3 号 p. 233-236

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抄録

漆工芸品はJapanで, 日本文化の象徴とみられている。漆は椀(わん), 盆, 家具, 重要文化財の神社, 仏閣の塗装材料として用いられている。漆は天然物で, 酵素の働きにより高分子化する唯一の実用塗料である。中国長沙で馬王堆(B.C.2世紀)の墳墓から出土した漆塗りの棺が光沢をもち, 漆の超耐久性が報道された。見, 触れ, 使ってわかる美とぬくもりの, 感性を伴う優れた耐久性は, 合成塗料が追従し得ない天然物の創り出す美である。漆をかきとり, 加工・加〓(しょく)する技術は, 仏教渡来(6世紀)以後日本各地の風土・産物そして文化を反映して作られた人間の英知の結晶である。漆工の化学, 耐久性のからくりを述べ, 問題点を示した。

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© 1988 公益社団法人 日本化学会
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