近年,化学分野においても生成AIの活用が急速に拡大している。三井化学では特許・論文の膨大な情報を迅速かつ的確に分析するため,独自開発の生成AIプラットフォームを構築した。これにより,研究者は特許情報や化学文献から重要な情報を迅速かつ的確に抽出し,創造的活動により多くの時間を割けるようになった。また,生成AI技術の活用のための情報収集,人材育成,新規技術の試行導入に関する戦略的取り組みについても解説する。
現代の豊かな暮らしは,多様な元素の特性を生かして創り出された物質で成り立っている。しかし,地球上の元素資源は有限かつ偏在している。我が国は,元素資源リスクをサイエンスで克服し,安心・安全な持続可能な社会を目指すイノベーション創出国家戦略「元素戦略」を20年前に提唱し,多様なプロジェクト研究により元素資源の有効活用の実例を示してきた。「元素戦略」コンセプトは次代を担う若い世代にもしっかりと伝えていかねばならない。
高等学校化学基礎の「化学が拓く世界」で活用可能な教材を開発した。具体的には,中高理科教科書の化学実験とマイクロスケール実験の環境負荷および安全性の評価方法を確立し,実験と評価活動を中心とした学習者主体のグリーン・サステイナブルケミストリー(GSC)教材である。また,本評価方法を活用することで,環境負荷および安全性の観点で実験教材を設計することも可能となった。これにより,探究的な学びの実践コミュニティーの創出・拡大につなげたい。
日本の大学進学率の男女差は縮小傾向にあるものの,現在も男子の方が高い。また,専攻分野の男女差は依然として大きい。分野別に見ると,女性が極端に少ない分野はSTEM系に多く,化学では水漏れ現象が生じていた。改善策を検討するにあたり,欧米の初等中等教育で行われてきた授業分析等が参考になることを紹介した。
近年理系を選択する女子学生が増えてきているとはいえ,世界基準からすると日本の女性理系進学率は低いと懸念されている。本稿では,「ジェンダーフリー」を「性差にとらわれない」とし,高校の教育現場におけるジェンダーによる進路指導の違いの有無について,実践例を挙げて考察する。筆者の取り組みから,十分な学びを経験したあとに進路決定をさせること,ロールモデルの提示とともに自己効力感を高める学校づくり,目標意識を持たせる進路指導のそれぞれがジェンダーフリーな進路決定に重要であることが示唆される。
ここ最近,国立大学を含む複数の大学の工学部において,女子枠を設定した入試が導入されている。これらに先駆けて,名古屋工業大学では1994年度入試から機械工学科において女子推薦入試を実施している。本稿では,女子推薦入試の導入の理由やその効果についてデータを基に示すとともに,将来工学部を受験してくれる女子生徒を増やすいわゆる進路選択支援の取り組みについて紹介する。
アンモニア性硝酸銀水溶液およびトレンス試薬(水酸化ナトリウム塩基性で調製したアンモニア性硝酸銀水溶液)を用いてギ酸塩とギ酸を基質とする銀鏡反応の定量的検討を行った。その結果,アンモニア性硝酸銀水溶液によるギ酸イオンの銀鏡反応は進行せず,トレンス試薬を用いた場合にはアンモニアが還元剤となる銀鏡の生成が進行し,ギ酸やギ酸イオンは反応しないことが明らかとなった。