放射光とは何か,放射光がどのような原理で発生するのか,2024年4月から運用が開始された3 GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)は,従来の放射光施設と比べてどのような点で優れているのか,について解説し,ナノテラスのビームラインがカバーする研究領域について概観する。
軟X線顕微分光は,物質の機能性を空間的に可視化することができる,他に類を見ない手法であり,NanoTerasuの高輝度軟X線を用いることで,そのエネルギー分解能や空間分解能も飛躍的に向上することが期待される。本稿では顕微分光の高輝度光源による恩恵,軟X線分光についての原理や特徴,これまでの軟X線顕微分光の応用事例などについて解説する。
材料の機能発現メカニズムを解明するためには,動作中・反応中の材料を直接計測する「オペランド計測」が不可欠である。雰囲気X線光電子分光法(AP-XPS)は近年最も発展したオペランド計測法の1つであり,気体雰囲気中の材料表面の元素分析や化学結合状態分析を可能にした。本稿では,筆者らが開発した軟X線を用いた雰囲気X線光電子分光装置の概略を説明し,銅-亜鉛モデル触媒表面上の二酸化炭素の化学反応をオペランド計測した研究例を紹介する。また,将来展望としてナノテラスにおけるオペランド計測について述べる。
身近な半導体であるシリコンについて,電子軌道,結晶と半導体電子回路の作り方を紹介する。そこには無数の物質が使われ,化学的操作が沢山ある。半導体の微細化が進むことの意味と効果を紹介するとともに,化学の法則に基づいた挙動を活用するとナノメートルサイズの構造を作りやすいことなど,今後,化学の役割がますます大きくなることを述べる。
社会のデジタル化が進んでいるが,デジタル情報を処理するには電気が必要である。情報が増えるにしたがって,社会が必要とする電力も増大する。これまでも,半導体製造の高集積化(微細化)技術を代表に,半導体デバイスの高性能化が電力の増加を抑制してきたが,カーボンニュートラルを実現するため,さらなる高性能化が要求されている。半導体製造において重要な役割を果たす感光材であるフォトレジストの日本企業のシェアは90 %に達する。本稿では,フォトレジストの理解のために,2章でフォトリソグラフィ,3章でフォトリソグラフィプロセスを解説した後,4章で現在主流の化学増幅型フォトレジストにおいてどのように改良が行われ,何が課題として残ったかを考察し,5章で次世代フォトレジスト開発を展望する。