1989 年 37 巻 4 号 p. 370-373
生物は, 長い進化の歴史の中で, とりまく環境と絶えず交流し, エネルギーや物質のやりとりをしてきた。その仕組みは神秘的にさえ映ずるほど巧みである。その中で大変興味深いのは, 一見単純にみえる金属イオンが生体内では驚くべき多種多様の活躍をしていることである。近年, 物理的手段や分析手段の目ざましい発展により, それら金属イオンの周囲の構造と機能が少しずつ明らかになりつつある。この領域は, 人工触媒酵素や金属イオンを含む医薬品への展開にも通じるところがあり, 近年発展が著しい。