化学と教育
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マグネタイト微粒子 : 磁気の効用を探る(話題を探る)
堀石 七生
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1992 年 40 巻 11 号 p. 768-772

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抄録

大航海時代を支えたのは常に極北を指し示す一片の磁石(コンパス)であった。今日のコンピューター社会を支援している磁気メディア(磁気テープ, FD, 磁気カードなど)もまた, 微小磁石からなるものである。マグネタイト(Fe_3O_4)はこのような磁石の代表的な磁性体で有用な工業材料である。一方, 1975年に米国人のブレークモア(R. P. Blakemore)は極北を目指して, べん毛で移動するバクテリア(走磁性細菌)を泥中から発見した。菌体内には微小磁石(生物磁石という)を有し, これがコンパスの役目をしていた。この微小磁石はマグネタイト微粒子であった。今日では菌体内で合成されるマグネタイト粒子の合成メカニズムや粒子表面の有機質薄膜の解明が進み, タンパク質と磁性粒子とのハイブリッド技術やハイブリッド磁石は医学, 薬理工学の新しい海図を描きつつあり, 出航の時も間近いものと思う。

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© 1992 公益社団法人 日本化学会
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