1992 年 40 巻 9 号 p. 593-597
前回に続き, フロンティア軌道の役割を有機化学の代表反応であるエチレンの臭素化で説明する。この親電子付加と呼ばれる反応で, Br^+やBr^-が水溶液中でどのように振舞うかを調べる。アルケン一般に対するこの反応での規則, マルコウニコフ則, を取り挙げ, 親電子試薬がHBrとBr_2では少し意味が違うことを述べる。フロンティア軌道の相互作用で引き起こされる反応の経路をHCNの異性化で紹介する。反応経路とは, エネルギー的にムダの少ない"ボブスレーの道"のごとしと示される。