1994 年 42 巻 5 号 p. 348-353
多細胞生物の細胞は自ら死ぬことができる。いわば自殺ともいえる細胞死はアポトーシスとよばれ, 遺伝子にプログラムされた能動的な細胞死である。アポトーシスは多細胞生物の発生過程での体の形づくりや, 成熟個体においては正常な細胞交替, 恒常性の維持に重要な役割を果たしている。また, 最近では, がんや自己免疫疾患, アルツハイマー病などの病態にも深くかかわっていることから, アポトーシスの研究は医学の分野においても注目を集めている。生命はアポトーシスという細胞の消去機構により支えられ, 守られている, といっても過言ではないだろう。