化学と教育
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連携教育によって大学が伝えるべきこと,得るべきもの(ヘッドライン:化学教育からみた連携教育)
加藤 正宏平竹 潤
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2003 年 51 巻 12 号 p. 743-745

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抄録

高校と大学との連携教育(高大連携)は,化学教育改革の切り札のひとつとして多くの期待が寄せられ,高大連携を支援する制度も充実してきた。しかしその一方で,高大連携の具体的な中身についてはお互い手探り状態にあるのが実情である。そうした中で,筆者らは,昨年度のサイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)の助成を受け,京都府立桃山高校において3回の実験講義を行った。その経験を通して見た事実は,1.実際の化合物や現象に触れ,実体験を伴う生きた化学を経験することが,「化学はおもしろい」という知的好奇心を抱かせるのにいかに大切であるか,2.大学(院)生と高校生とが密にコンタクトすることが,双方にとっていかに高い教育的効果を生むかという点である。これまでの高大連携は,高校側にはメリットがある反面,大学側には得るものが少ないと捉えられがちであったが,大学(院)生の経験と教育,人間的成長という点で,これほど大きな教育的価値と可能性を秘めた機会は少なく,その点において,大学は高大連携を積極的に利用すべきだろう。しかし,大切なことは,実体験を伴う生きた化学を通して「化学のおもしろさ」を伝えることであり,連携教育はその方法のひとつに過ぎないことを銘記すべきである。

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© 2003 公益社団法人 日本化学会
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