2005 年 53 巻 12 号 p. 679-683
エネルギーという言葉は誕生すると急速に普及して日常語となった。ほぼ同時に生れたエントロピーの方はようやく近年になって熱力学の領域を超えた広い意味に使われるようになってきた。そのような広義のエントロピー,例えば「太陽光線の与える豊富なネゲントロピー」とか「情報エントロピーの増大」などという表現に接する前に,本来の熱力学量としての意味を把握しておく必要があるのではなかろうか。高校の数・物・化の教科内容に基づき,「広辞苑」の簡潔な説明を拡大補充するという形で,エントロピーの入門的解説を試みた。