2006 年 54 巻 8 号 p. 446-449
生体内で起こっている数多くの化学反応,たとえば酵素反応,抗原抗体反応,情報伝達,薬物反応などは,人工的な反応からは想像もできないほど高能率,高選択的である。これらの生体反応が円滑に行われるには分子認識が必須である。分子認識はちようど鍵と鍵穴に例えられる。たとえば,基質(鍵)が酵素や受容体(鍵穴)にフィットしたときに分子認識が生じる。本稿では,酵素に焦点をあててなぜ生体内反応は正確で速いのかを探るとともに人工化合物による分子認識を利用した酵素を模倣した反応についても紹介する。