2012 年 60 巻 4 号 p. 162-163
われわれ人類は,材料や素材の化学的な性質を利用して身の回りにあるいろいろな「もの」の形をつくりだしている。通常,ある程度以上の力を金属やセラミックスでつくられた物体に加えると,その物体は変形する。さらに,力を加えると破断が起こる。しかし,プラスチックはしなやかに曲がり,場合によっては元の形に戻る。この性質を利用すれば,金属やセラミックスではつくることの難しい「形状の記憶」が可能となる。製品化されている形状記憶プラスチックはゴム弾性の原理を利用している。最近,カテナン構造を利用して形状の記憶を行うポリ(シクロヘキサ-1,2-ジチアン)が合成されたので,この成果について紹介する。