日本東洋医学雑誌
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原著
漢薬「釣藤鉤」の薬用部位に関する史的考察(第2報)
─薬用部位によるアルカロイド含量の相違─
御影 雅幸遠藤 寛子香月 茂樹垣内 信子
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2008 年 59 巻 2 号 p. 279-285

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抄録

前報で,釣藤鉤の薬用部位に関する歴史的変遷を調査した結果,古来の原植物はアカネ科のカギカズラUncaria rhynchophylla (Miq.) Miq. であると考証し,また薬用部位は明代前半までは藤皮,明代後半からは現在のような鉤つきの茎枝由来に変化したことを明らかにした。薬用部位が変化した理由として明代の本草家が「藤皮よりも鉤の方が効力が強いこと」を挙げているので,本研究では日局「釣藤鉤」の規定に基づき,日本産カギカズラの藤皮と鉤の総アルカロイド(リンコフィリン及びヒルスチン)含有率を比較した。その結果,藤皮の方が有意に高いことが明らかになり,アルカロイド含量で評価する限りは藤皮の方が薬効的に優れていると判断された。
近年の研究では,リンコフィリンには学習記憶改善作用,ヒルスチンには血圧降下作用などのそれぞれ異なった作用が知られている。このことから,日本産カギカズラにおいては,藤皮と鉤では成分組成にも違いが見られるため,薬効にも違いがある可能性が考えられ,今後の薬理学的な研究が待たれる。

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© 2008 一般社団法人 日本東洋医学会
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