日本東洋医学雑誌
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原著
  • ~寛解状態の関節リウマチ患者との比較~
    安部 武生, 田村 誠朗, 王 康治, 藤原 弘之
    原稿種別: 原著
    2021 年 72 巻 3 号 p. 227-234
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    目的:シェーグレン症候群(SS)患者の気血水の状態と口腔関連 QOL の関連を検討する。

    方法:SS 群(n=41)と寛解状態の関節リウマチ(RA)群(n=32)に寺澤の気血水スコア,Yin-Deficiency Questionnaire を和訳した陰虚スコア,口腔関連 QOL の質問票であるOral Health Impact Profile(OHIP)-14を収集した。気血水スコア,陰虚スコアについて SS 群と RA 群の間で比較し,SS 群のOHIP-14に対する統計解析を行った。

    結果:SS 群は RA 群と比較して気血水スコアと陰虚スコアは有意に高値であり,多変量解析では陰虚スコアと 瘀血スコアが関連した。
    SS 群のOHIP-14は瘀血を除く全ての証のスコアと相関関係が認められ,多変量解析で気鬱スコアが関連した。

    考察:SS 患者は陰虚,瘀血が考慮され,口腔関連 QOL 低下例は気鬱に配慮すべき。

臨床報告
  • 沢井 かおり, 吉野 鉄大, 大岸 美和子, 渡辺 賢治
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 235-238
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    漢方治療では,異なる病状の症例でも漢方的病態が同じであれば同一処方が有効であり,これを異病同治と称する。特に家族では,遺伝的素因や生活環境の共通性から漢方的病態が類似しやすい。今回,不登校の孫と易疲労の祖母に対する異病同治の症例を経験したので報告する。

    症例1(孫)は13歳女性,主訴は不登校である。やや実証,寒熱中間証,気逆,気滞,血虚と診断して柴胡加竜骨牡蛎湯を処方したところ,次第に登校できるようになり,集中力がついて成績もよくなった。

    症例2(祖母)は73歳女性,主訴は易疲労である。虚実中間証,寒熱中間証,気滞,気虚と診断して柴胡加竜骨牡蛎湯を処方したところ,体調がよくなり元気になった。

    不登校の孫と易疲労の祖母に対して,柴胡加竜骨牡蛎湯がいずれも奏効した。これは血縁であるということと,家庭内のトラブルという背景の一致によって,漢方的病態が似ていたためと思われた。

  • 大塚 稔
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 239-243
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    桂枝加朮附湯を用いて,手部の炎症性や疼痛性疾患の治療に良好な結果を得ている報告は多い。これらを参考に,整形外科外来診療において,桂枝加朮附湯による DIP 関節の変形腫脹(ヘバーデン結節)や疼痛治療を行った16例を基にして,桂枝加朮附湯による手指関節痛治療の有用性について検討した。症例は16例全例が女性であり,年齢は57歳~80歳,平均67.4歳(標準偏差5.88歳),罹病期間6ヵ月~15年,平均4年6ヵ月。冷え症(虚症,寒証)11例,中間証5例,BMI20以下の痩躯が7例,手指の腱鞘炎を合併している症例が4例であった。疼痛緩和までの期間は2ヵ月から8ヵ月,平均3ヵ月,その後8例で内服を継続し,維持量は2.5g であった。全例で変形の進行はなかった。全例で痛みは消失ないしはほぼ消失し全例で鎮痛効果がみられた。局所の熱感は全例で消失した。手指関節炎にも枝加朮附湯は有効治療となり得る。

  • 高村 光幸
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 244-247
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    【緒言】染色体異常のある先天性障害児の生活の質が,漢方治療にて改善した2例について検討した。【症例1】5p 欠失症候群の6歳男児。興奮性と不眠の加療目的で甘麦大棗湯に小建中湯を追加,さらに抑肝散を併用後,明らかに興奮する度合いが減り朝まで熟睡するようになった。【症例2】2歳男児。8番染色体異常あり。胸部術後に抜管困難となり,気管切開,胃瘻造設となった。5から15分に1回と,頻回な吸痰が必要で,また常に下痢するとして漢方治療開始。茯苓飲合半夏厚朴湯にて吸痰回数減少し,小建中湯を追加後,2時間以上吸引が不要となり,下痢も改善した。気切部位閉鎖術後も黄耆建中湯,小青竜湯,人参湯にて経過をみているが,保育園に通園するようになり非常に元気に過ごしている。【考察】生命予後には関与しないような小さな改善ではあるが,生活の質向上と養育者の負担軽減に寄与できた。小児へ漢方治療を行うことのひとつの意義と考える。

  • 有馬 菜千枝, 中山 明峰, 佐藤 慎太郎, 江崎 伸一, 岩﨑 真一
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 248-253
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    夜驚症と睡眠時遊行症を合併した症例を報告する。症例は9歳男児で,睡眠中に突然覚醒すると歩き回りや泣き叫びといったエピソードが出現するようになった。発熱した日や学校行事に重なって出現することがあった。エピソードにより受傷するほどであり薬物治療が必要と考えられた。気虚がベースにあると考え小建中湯を内服したところ徐々にエピソードがなくなり,発熱機会も減少した。

    今回治療前後に終夜睡眠ポリグラフ検査を行ったところ睡眠の質が改善していることが確認された。小建中湯は夜驚症の治療薬として知られているが終夜睡眠ポリグラフ検査を通して評価をしているのは今回の症例が初めてと考える。

  • 福嶋 裕造, 井藤 久雄, 田頭 秀悟, 栁原 茂人, 中村 陽祐, 藤田 良介
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 254-259
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症の治療のためにイバンドロン製剤投与中に発症した骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ : Anti-resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw)の91歳女性について報告を行う。ARONJ 発症後2ヵ月間は歯科で抗生剤投与,切開排膿術の治療を受けていたが治癒しないため,当院でも補中益気湯を投与して急速に治癒傾向となり1ヵ月程度で沈静化した。ARONJ は難治性の疾患と考えられているが,補中益気湯の追加投与で症状が速やかに改善傾向になったと考えられた。ARONJ は希な疾患でもあり症例報告は散見されるが,漢方薬を併用した症例は我々が渉猟した限りでは報告されておらず,本症例が最初の報告と考えられる。

  • 平澤 一浩, 小野 真吾, 塚原 清彰
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 260-263
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    外耳搔痒症は,補血剤や清熱剤で治療されることが多い。今回,補血剤や清熱剤では改善せず,当帰四逆加呉茱萸生姜湯が奏功した一例を経験したので報告する。症例は52歳女性。45歳時から左耳のかゆみがあり,5件の耳鼻咽喉科で治療をするが難治性であった。当科でも,当帰飲子,消風散,抑肝散加陳皮半夏,温清飲,十味敗毒湯,桂枝茯苓丸加薏苡仁を用いたが改善しなかった。証の再考により裏寒証と診断し,鼠径部の圧痛を認め,当帰四逆加呉茱萸生姜湯を使用したところ著効した。外耳搔痒症の鑑別の一つとして,裏寒証も考慮する必要があると考えた。

  • 矢野 博美, 牧 俊允, 後藤 雄輔, 吉永 亮, 井上 博喜, 久保田 正樹, 田原 英一
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 264-274
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    乳癌治療に伴う諸症5例(関節痛,更年期様症状,化学療法の嘔気・嘔吐,しびれ・疼痛,化学療法中の倦怠感,経過観察中の不安神経症)に漢方治療を行い良好な経過が得られた。漢方治療を併用することで乳癌治療における副作用で生じる苦痛を軽減出来る。その事で乳癌治療を完遂し,精神症状を緩和し,再発予防,健康増進に貢献出来る。乳癌のがんサポーティブケアとして漢方治療が有用であると考えた。

  • 平澤 一浩, 小野 真吾, 塚原 清彰
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    臨床的に亜急性壊死性リンパ節炎と診断し,小柴胡湯が奏功した2例を経験した。症例1は37歳女性。12日前から左頸部腫脹,疼痛があり,その後,発熱も出現。他院で抗菌薬治療を行うが改善せず,当科を受診。左頸部リンパ節の多発腫脹があり,採血検査で白血球の低下と LDH の上昇を認め,臨床的に亜急性壊死性リンパ節炎と診断した。小柴胡湯を投与し,3日目には解熱し,頸部腫脹も著明に改善。10日目には症状所見ともに消失し,廃薬とした。症例2は12歳男性。8日前から左頸部腫脹,疼痛および発熱が出現。他院で抗菌薬治療を行うが改善せず,当科を受診。左頸部リンパ節の多発腫脹があり,採血検査で白血球の低下と LDH の上昇を認め,臨床的に亜急性壊死性リンパ節炎と診断した。小柴胡湯を投与し,3日目には解熱し,10日目には頸部腫脹も縮小し圧痛は消失。18日目には症状所見とも消失し,廃薬とした。

  • 地野 充時, 辻 正徳, 寺澤 捷年
    原稿種別: 臨床報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 281-286
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    柴陥湯は,かつては感染性胸膜炎にしばしば使用されてきた方剤であったが,近年ではその有効例の報告は少ない。今回,抗菌薬の効果が頭打ちとなり,ドレナージ困難な胸水が残存した細菌性胸膜炎に対し,柴陥湯が有効であった症例を経験した。西洋医学的治療のみで十分に改善しない胸膜炎に対しては,柴陥湯を含めた漢方治療を積極的に介入させるべきであると考えられた。

調査報告
  • 篠原 昭二, 若山 育郎, 柳澤 紘, 山下 仁, 井田 剛人, 金子 聡一郎, 高山 真, 南雲 三枝子
    原稿種別: 調査報告
    2021 年 72 巻 3 号 p. 287-301
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    【目的】我が国の鍼灸治療における経穴の特性・反応の利用状況,経穴の使用頻度を明らかにする。

    【方法】日本東洋医学会会員と鍼灸学系大学協議会加盟大学教員を対象にアンケート調査を実施した。設問は,年齢,性別,職種,鍼灸臨床歴,治療方式,経穴の特性と反応の利用,鍼治療と灸治療における経穴の使用頻度等とした。

    【結果】有効回収アンケートは59通(鍼59通,灸50通),平均年齢52±12才,男性45名・女性14名,医師13名・鍼灸師46名,鍼灸臨床歴21.1±11.5年であった。多くが経穴の穴性,主治病症,得気,鍼妙,手下感を利用していた。 鍼治療で約5割の患者で使用されている経穴は,足三里,三陰交など10穴であった。灸治療では5割以上の患者で使用されている経穴はなく,約3割の患者で使用されている経穴は,腎兪,三陰交,足三里など13穴であった。

    【結語】我が国における経穴の使用実態が今回初めて明らかとなった。

短報
  • 若山 育郎
    原稿種別: 短報
    2021 年 72 巻 3 号 p. 302-306
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    腰痛は,古来鍼治療の対象とされている症状で,我が国の国民の最も多い愁訴の一つである。その有用性については,我々は経験的にわかっているつもりでいるが,近年そのエビデンスを示すことが求められている。現在では,主にランダム化比較試験をもとに,それらを統合し,最終的に推奨度で表した診療ガイドラインが医療現場における臨床判断に用いられている。

    今回,英米の腰痛に対する鍼治療の診療ガイドラインを比較検討した。英国の NICE ガイドラインは,日本式の鍼治療を十分に理解していなかったため placebo/sham を対照群に設定した臨床試験を重視し,鍼治療の効果を過小評価していると思われた。一方,米国の ACP ガイドラインは,主に通常治療を対照群とした臨床試験を重視し鍼治療の効果を現実的に評価していた。

フリーコミュニケーション
  • 矢野 博美, 牧 俊允, 後藤 雄輔, 吉永 亮, 井上 博喜, 久保田 正樹, 田原 英一
    原稿種別: フリーコミュニケーション
    2021 年 72 巻 3 号 p. 307-312
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    飯塚病院では1992年の漢方診療科開設以来はじめて院内薬局内の車前子にタバコシバンムシの幼虫が発生した。 その幼虫は蛹,成虫に成長した。約3ヵ月後,ビニール袋に入った残りの車前子には,幼虫と成虫が複数発生した。 タバコシバンムシはどこにでもいる虫であり,特に夏は注意が必要である。噛む力が強くビニール袋には穴を開けて侵入するが,頑丈な密閉容器に入れて冷蔵庫内に保存することが重要で,煎じ薬を処方する際には保管に関する指導が必要である。

  • 蛯子 慶三, 伊藤 隆, 木村 容子, 高田 久実子, 辻 恭子, 津嶋 伸彦, 陣内 厚子, 高田 常雄, 小野 博子, 澤口 博, 村上 ...
    原稿種別: フリーコミュニケーション
    2021 年 72 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/12
    ジャーナル フリー

    「漢方診療を行う医師が患者に適切な鍼灸治療を提案できる」ことを目的として,鍼灸師7人,医師5人で構成したメンバーで鍼灸カリキュラムを試案し,漢方外来を担当する当研究所医師16人を対象に実施した。学習プログラムは講義と実習で構成し,合計4回行った。各学習プログラムではテストを実施して理解度を評価し,全学習プログラム終了後には漢方診療での有用性等についてアンケート調査した。各回の参加人数は平均10.8±1.3人であった。テスト(10点満点)結果は平均9.3±0.5点,アンケート結果は16人中14人(88%)が漢方診療に有用,やや有用と回答した。カリキュラム実施前後で,漢方外来受診歴のある鍼灸初診数を比較したところ,実施後は1.8倍増加した。これらの結果より,本カリキュラムが鍼灸に関する一定の理解ならびに漢方診療に役立つことが示唆された。 今後さらなる検討が望まれる。

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