日本東洋医学雑誌
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臨床報告
  • 山崎 武俊, 福岡 正平, 峯 尚志
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    動悸で外来受診する患者は多く,病的な動悸として不整脈を表現している場合もあり,その適切な診断は患者の心事故を防ぐために重要である。しかし胸苦しさや息切れを含めて動悸として訴えることがあり,病的意義を持たないことも多い。一方,漢方医学は疾患の有無によらず,患者の虚実に合わせて治療できるが,その有効性を多数例で検討した報告はない。我々は動悸101名を対象に,西洋医学診断を行い治療が必要とされたときはそれを優先(西洋医学単独,W 群:19名)し,西洋医学疾患が明らかでないか治療無効時には,漢方医学単独(K 群:62名),漢方・西洋併用(KW 群:20名)による治療を行い,その有効性を検討した。3群とも高い有効率(W 群:100%,K 群:96%,KW 群:100%)を示した。動悸に対して,西洋医学および漢方医学治療を使い分けることで症状改善に大きな効果が期待できる。

  • 平澤 一浩, 塚原 清彰
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    聴覚情報処理障害は,聴力の低下はみられないが,雑音下など聴取しにくい環境の中で聞き取り困難を訴える障害である。発達障害,認知機能の弱さ,心理的な問題を抱えている児が多くを占める。今回,精神的ストレスを契機に発症したと思われる小児の聴覚情報処理障害例で,小建中湯を用い良好な経過をたどった一例を経験した。

    症例は12歳女児。2年前からいじめの被害を受けるようになり,そのころからざわついた環境で言葉が聞き取りにくいと感じるようになった。当科を受診し,各種聴覚検査に異常を認めず,聴覚情報処理障害と診断した。小建中湯を投与し,12週後,聞き取りに不自由を感じることはほとんどなくなった。また,いつもの元気を取り戻しつつあり,いじめに対してもあまり気にせず受け流せるようになった。16週後,症状は落ち着いており,小建中湯5.0 g/日に減量。20週後に廃薬とした。

  • 椛島 浩明, 貝沼 茂三郎
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    歯ぎしりは,日常診療で経験する症状の一つである。従来の歯科治療法として,マウスピース(スプリント)療法,行動療法等があるが,歯ぎしりがなくなる程の有効な治療法は確立されていない。今回,我々は歯ぎしりと不眠を主訴として受診した2例に対して漢方医学的診断からいずれも背景にストレスが関与していると考え,抑肝散を処方したところ,睡眠時歯ぎしりや不眠症などの自覚症状の改善が認められた。以上の結果より,抑肝散は睡眠時歯ぎしりやそれに伴う不眠症に関して,有効な治療薬の一つである可能性が考えられた。

  • 原田 直之, 牧 俊允, 吉永 亮, 井上 博喜, 矢野 博美, 田原 英一
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    胸中の苦悶感に山梔子を含む梔子剤が用いられることが多いが,梔子乾姜湯に関する症例報告は過去にほとんどみられない。今回,微熱,胸中の灼熱感と高度な倦怠感に梔子乾姜湯加減が奏功した症例を経験したので報告する。73歳女性。5年前に組織型不明の肺癌に対し化学放射線治療を受け,4年前に放射線肺炎を発症したが自然軽快した。3年前から微熱と胸中灼熱感,全身倦怠感が出現するようになり,約半年の周期で消退と再燃を繰り返した。周期に季節性はなく,症状の持続期間も一定ではなかった。1年前から他院で漢方治療を受けたが,改善に乏しく当院を受診した。一連の症状が,胸中の虚熱と心下の冷えによって生じたと考え,傷寒論の梔子乾姜湯の条文を参考に投薬したところ約2週間で著効を得た。報告の少ない方剤ではあるが,短期間で効果が得られており同様の症状には有効と考える。

  • 小笹 寧子, 谷川 聖明, 金田 和久
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    筆者らは漢方方剤,当帰芍薬散により肺うっ血の改善が得られ運動耐容能を維持できた高齢心不全の2例を経験した。症例1は83歳の女性で,虚血性心疾患により経皮的冠動脈形成術の既往があり,慢性腎臓病と関節リウマチをはじめとする多疾患合併があり,3種類の利尿薬を含む多剤併用が行われていたが,肺うっ血のコントロールが不良で疲れやすく下肢浮腫も中等度認めていた。当帰芍薬散を投与したところ急速に尿量が増加し,利尿薬は1種類に減薬でき,易疲労性や浮腫も改善した。症例2は88歳男性で,慢性心房細動,高度の僧帽弁逆流症に伴う労作時呼吸困難,発作性夜間呼吸困難および下肢浮腫を認めた。当帰芍薬散を投与したところ諸症状,肺うっ血ともすみやかに改善し,さらに治療を追加することなく元通りの日常生活が可能となった。血虚・瘀血・水滞を改善する作用を有す当帰芍薬散は,高齢心不全患者の運動耐容能の維持に有用な方剤と考えられる。

  • 平澤 一浩, 塚原 清彰
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    術後性上顎嚢胞は,上顎洞根治術後に生じる晩発性合併症である。根治治療は手術のみで,現在は多くの例で内視鏡下の開窓術が行われるが,永続的な開窓部の形成が困難な例もある。今回我々は,九味檳榔湯の投与により縮小が得られ,手術を回避しえた術後性上顎嚢胞の一例を経験した。

    症例は58歳男性。40年前に両側の上顎洞根治術を受けた。半年前から左頬部腫脹があり,近医で抗菌薬治療を行うが改善なく,当科を紹介受診した。CT 所見より術後性上顎嚢胞と診断したが,鼻腔と嚢胞が接する部位が小さく,永続的な開窓部の形成が困難と考えられた。口腔内からの穿刺は拒否されたため,内視鏡下手術を予定しつつ,九味檳榔湯を投与した。6週後,頬部腫脹は消失。12週後の CT でも嚢胞の縮小を認め,手術が回避できた。それ以上の縮小は認められず,20週後に処方量を減量し,経過観察中である。

  • ―肥満体型を認めない月経不順の女性―
    木村 容子
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    防已黄耆湯で浮腫などの症状が改善し,月経周期も整った3症例を報告した。症例1は易疲労感やイライラが加味逍遙散で軽減した17歳であり,顔や足の浮腫や手掌の汗のほか,体重増加もあったため防已黄耆湯を追加して月経不順が改善した。症例2は頭痛,顔や足の浮腫を訴える15歳であり,痩せ型ではあったが,体重増加を気にして膝の違和感もあったため,防已黄耆湯を処方したところ月経が順調になった。症例3は疲れやすい,冷え症,月経不順を訴える水太りの42歳女性であり,体重増加,足の冷えと浮腫がみられたため,防已黄耆湯を処方したところ月経周期が徐々に整った。水太り,汗,浮腫など体表に水が偏在する「表虚水気」がある患者に防已黄耆湯が有効であり,月経不順も改善した。全症例で服用後に体の軽さを感じた。水太りでない場合でも,急な体重増加,浮腫や浮腫感,自覚的な冷えの有無が参考となると考えられた。

  • 服部 孝雄, 村井 克昌, 西村 甲
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    症例は,特発性血小板減少性紫斑病,甲状腺機能異常,子宮内膜症,子宮筋腫などの合併症を有す38歳肥満女性である。多彩な病歴で不妊治療に至るまでの経過は長く,種々の治療を受けた。また,不妊治療開始後も子宮筋腫に対して開腹手術を受けている。不妊治療中に出現した多愁訴に対して漢方治療を行った。当帰芍薬散,小建中湯の併用療法を行い,約3ヵ月後に諸症状が改善するとともに妊娠し,妊娠経過も順調で満期分娩にて女児を出産した。また,妊娠中の悪阻,咳嗽などに対して追加併用した茯苓飲,苓甘姜味辛夏仁湯もそれぞれ奏効した。なお女児に仮死,奇形等なく,正常に発育発達している。不妊,不育症の漢方治療において,瘀血,腎虚ばかりでなく,脾虚,虚労にも注目する必要性が示唆された。

  • 平澤 一浩, 及川 哲郎, 塚原 清彰
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    COVID-19の症状の一つとして嗅覚障害がある。多くは早期に自然軽快するが,後遺症として残存する例もあり,確立された薬物治療は現状ない。今回我々は,COVID-19後の嗅覚障害に香蘇散を中心とした漢方治療が奏効した例を経験した。

    症例1は32歳の女性。8ヵ月前に COVID-19に罹患した後,嗅覚障害が残存した。陰証のやや虚証で,当帰四逆加呉茱萸生姜湯を処方した。8週間継続し,身体が温まり調子がよくなったと実感があったが,嗅覚は変化が見られなかった。嗅覚障害による気分の落ち込みも目立っており,香蘇散を併用開始した。その後から嗅覚は徐々に改善傾向となった。症例2は17歳の男性。4ヵ月前に COVID-19に罹患した後,嗅覚障害が残存した。陽証の中間からやや虚証で,気鬱の兆候が目立った。香蘇散を処方し,嗅覚は改善傾向となった。

調査報告
  • ―実習前後での検討―
    森田 智, 村上 綾, 平地 治美, 渡邊 悠紀, 中口 俊哉, 越智 定幸, 奥平 和穂, 平崎 能郎, 並木 隆雄
    原稿種別: 臨床報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    短時間の鍼灸実習が与える教育効果を明らかにするため,病院実習中の医学部5年生112名を対象に,体験を含む1時間の鍼灸実習および実習前後でのアンケート調査を実施した。全10項目のうち8項目において,実習後に「はい(思う)」の割合は有意に大きく,ポジティブな変化が得られた。実習前と後の変化幅が大きく現れた項目は,「科学的だと思いますか?(実習後に+47.4%)」,「全般的に,どのようなイメージをもっていますか?(+39.3%)」,「将来,鍼灸を取り入れたいと思いますか?(+39.3%)」であった。伝統医学を学ぶ機会はさらに確保されることが望ましいが,時間や人員が有限であるという問題点も改善策が必要となる。本調査により,短時間の実習で有益な教育効果が示されたことは,鍼灸実習実施の重要性を示しており,他の医学部学生や医療系学部の学生に対しても同様に期待できる可能性を示している。

  • 高山 真, 網谷 真理恵, 松田 隆秀, 佐藤 寿一, 加島 雅之, 石上 友章
    原稿種別: 調査報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 180-187
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    2015年,全国医学部で実施可能な漢方医学教育基盤カリキュラム作成を目的に,全国の漢方医学教育担当者で構成された日本漢方医学教育協議会が発足した。ニーズ調査のうえ実施可能な講義時間を240分とし,学習到達目標の設定のため「歴史」「診察法と証」「漢方薬の作用」「臨床例」「鍼灸」「評価」のグループを作り習得内容を抽出し,全体での合意形成により2016年,「漢方医学卒前教育の基盤カリキュラム2016」を策定した。その後,教授内容を盛り込んだモデルスライドと講義ガイドを作成し,これに準じた教科書が2020年に出版され,2021年にはこれら全体の取り組みと内容が全国に公開された。

  • 髙橋 京子, 髙浦(島田) 佳代子, 矢野 孝喜, 川嶋 浩樹, 吉越 恆, 福田 浩三
    原稿種別: 調査報告
    2023 年 74 巻 2 号 p. 188-205
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/23
    ジャーナル フリー

    大和芍薬の高品質性を補完する伝統的加工技術に着目した。まず,近世以降の歴史考証から奈良県に残る自然乾燥の伝統手法を再見した。次に1938~2019年間の奈良県薬用作物生産記録を収集解析し,シャクヤク栽培実績の変遷から地域生産と篤農技術の衰退を検証した。種苗供給から栽培・加工調製技術の指導に資する薬種商の伝統知を可視化する目的で,棚干場に3年間,気象観測装置を設置し実測した。主な国内栽培地の自然環境をメッシュ農業気象データシステムの気候要素予測値で比較した場合,冬期,奈良県の気候は他県より高温低湿な環境で地勢に恵まれた自然乾燥適地であった。風向風速の実測値による風配図から,日中は西風が多く,断続的で緩やかな多様に変化する奈良の風況を示した。地域環境特性を利用した燃料不用の自然乾燥に対し,他県は機械乾燥が多い。高品質を可能にする気候因子の数値化で,伝統技術の合理性を明確にした。

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