日本東洋医学雑誌
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原著
  • 尾崎 岩太, 野口 光代, 右田 巳賀, 池田 秀樹, 柿添 亜矢, 佐藤 英俊, 栗山 一道
    原稿種別: 原著
    2020 年 71 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    目的:冷え症に関連する身体症状,気血水の異常を明らかにする。
    対象と方法:健常な大学4年生118名(男66名,女52名)に対し,質問票を用いた横断的研究を行った。冷え症の有無は古谷らの報告に従い判定,身体症状は気血水スコア(寺澤)を検討した。
    結果:冷え症と判定されたのは男4名(6.1%),女14名(26.9%)。多変量では冷え症に関連する因子として女性 (OR 4.65,P = 0.0427)と頭重・頭冒感(OR 2.98,P = 0.0190),下肢・四肢の冷え(OR 1.94,P = 0.0480)が有意な因子として抽出された。病態別では単変量解析で気虚,血虚,水毒が冷え症でスコアが高く,多変量解析では気虚が冷え症に関連する傾向がみられた。
    考察:冷え症は女性に多く,気鬱指標の頭重・頭冒感,気逆指標の下肢・四肢の冷えが関連し,大学生では気の異常が冷え症に関連している可能性がある。

  • 平山 暁, 富田 勉, 横田 廣夫, 笠巻 祐二, 松﨑 靖司, 青柳 一正
    原稿種別: 原著
    2020 年 71 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    本研究では瘀血・血虚に用いられる漢方製剤が微小循環動態に及ぼす影響の特性を,ライブイメージングにより検討した。マウス腹部皮下血管を解析対象とし,動脈(血管径50μm 以上),細動脈(50μm 未満)および毛細血管(10μm 未満)の3部位でライブイメージングを行い,血管径,赤血球血流速度,血流量を解析した。

    桃核承気湯は投与後早期から幅広く血流増加が認められ,その主たる作動標的は動脈と毛細血管であり,血管径拡大と赤血球血流速度増大により血流量増加をもたらした。桂枝茯苓丸は細動脈が標的血管であり,血管径拡張により桃核承気湯よりも長時間持続する血流量増加が認められたが,動脈や毛細血管への効果は乏しく,赤血球血流速度増大効果は認められなかった。当帰芍薬散の標的血管は毛細血管であり,赤血球血流速度増加により血流量を増加させたが,血管径拡張効果はみられず,その効果発現は前掲2剤に比べより緩徐であった。

臨床報告
  • 坂本 篤彦, 貝沼 茂三郎, 前田 麻木, 前田 利朗, 宮田 潤子, 河野 恵子, 栗山 一道
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    症例1は59歳女性。5年間続く左季肋部から側胸部,胸背部にわたる疼痛を主訴に初診。柴胡剤や当帰湯などによる漢方治療は無効であった。初診2年後に背部を診察したところ左痞根近傍を通る幼少時の切創痕を認め,同側痞根に硬結と圧痛を認めた。当帰四逆加呉茱萸生姜湯を投与したところ,疼痛は速やかに改善した。症例2は66歳女性。7年前より心窩部・右季肋部から背部の痛みを自覚し,2年前には症状増悪のため精査されるも疼痛の原因は不明であった。柴胡剤や桂枝茯苓丸などは無効であったが,当帰四逆加呉茱萸生姜湯加附子にて疼痛は改善した。 右季肋部から下腹部に及ぶ,32歳時の胆嚢摘出術の術創が認められ,後日確認したところ,同側痞根の硬結と圧痛を認めた。

    本2症例における上腹部~背部の外傷/手術歴ならびに痞根の所見は当帰四逆加呉茱萸生姜湯証の成立との関連を有すると推測された。

  • 村井 政史, 堀 雄, 森 康明, 古明地 克英, 政氏 伸夫, 八重樫 稔, 今井 純生, 大塚 吉則, 本間 行彦
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    症例は42歳男性で,10年ほど前からほぼ毎日,夕方から夜中にかけて体温が38℃を超える発熱を認めるようになった。発熱の原因ははっきりせず,不明熱に当てはまると思われた。発熱時には汗が全く出ずに顔がほてって苦しくなり,高熱が続くと発汗して解熱し楽になった。発熱時の無汗は太陽病実証の特徴で,夕方から夜中にかけての発熱は往来寒熱で少陽病の特徴ととらえ,柴葛解肌湯で太陽病と少陽病の両病位に対応しようと考えた。柴葛解肌湯を服用すると多量に発汗し,その翌日から体温は36℃台で経過した。実際の臨床では複数の病位にわたった特徴を呈することがしばしばあり病態の把握に迷うことが少なくないが,合病や併病の考え方を踏まえて方剤を選択すると治療に役立つと思われた。

  • 森 光輝, 廣瀬 達也, 田中 孝治, 竹田 亜子, 宇野 雅博, 高木 肇
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    分子標的治療薬の副作用は,殺細胞性抗がん薬とは異なりざ瘡様皮疹や斑状丘疹状皮疹などの皮膚障害が高頻度に発現し,臨床的に問題となる場合がある。今回,尋常性ざ瘡への有効性が報告されている十味敗毒湯と黄連解毒湯を,分子標的治療薬による皮膚障害に対して投与し,その投与状況や効果について検討した。2013年6月から2017年6月に,分子標的治療薬の皮膚障害に対してJHT+OGTが投与された患者を対象とした。評価項目はJHT+OGT服用前後の皮疹のgrade(CTCAE v4.0)とした。対象患者22例においてJHT+OGT服用前後の皮疹はgradeの中央値2から1へと有意に改善が見られ(p =0.011),改善が14例,維持が6例,悪化が2例であった。今回,分子標的治療薬による皮膚障害に対するJHT+OGTは,治療法の選択肢の一つとなり得ることが示唆された。

  • 濱口 眞輔, 金子 達, 清水 いはね, 木村 廣三
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    後期神経梅毒が原因と考えられた嚥下障害と誤嚥性肺炎を呈する患者の症状緩和に半夏厚朴湯が有効であった1例を経験した。症例は当科で痛みの加療を行っていた67歳の男性で,嚥下困難を主訴として加療を希望した。神経学的所見や血液,髄液検査の結果,神経内科医によって後期神経梅毒に起因する球麻痺による嚥下障害と両肺下葉の誤嚥性肺炎と診断された。漢方医学的所見に基づいて本症例を気滞および痰飲と判断して半夏厚朴湯7.5g/日を処方した結果,内服から1週間後には嚥下困難が軽快し,3週間後に訴えはほぼ消失した。また,誤嚥性肺炎の改善もみられた。後期神経梅毒は感染後20~30年で発症し,その基底核障害によって嚥下反射や咳反射が低下するが,理気化痰作用を有する半夏厚朴湯は咽喉頭や気管粘膜に放出されるサブスタンスPの濃度を増加して,後期神経梅毒が原因と考えられる嚥下異常の緩和に有益な方剤であると結論した。

  • 小宮 ひろみ, 鈴木 朋子, 海老 潤子, 中野 裕子, 北村 拓也, 安斎 圭一, 三潴 忠道
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    精神疾患を有する患者の月経随伴症状に対し,漢方療法にて長期間症状をコントロールできた3例を経験した。 症例1:39歳 当院心身医療科で持続性気分障害の治療中,月経前気分不快障害を認め緊急入院となり,当科紹介となった。桃核承気湯から開始,駆瘀血剤と柴胡剤を証に応じて処方継続し,月経前症状は軽減した。症例2:29歳 統合失調症の加療中,月経痛及び月経前気分不快障害を認め心身医療科から当科紹介となった。陽証時には加味逍遥散,女神散や駆瘀血剤と柴胡剤の併用,陰証時には人参湯と大建中湯による加療にて月経痛は消失し,月経前の精神症状は軽減した。症例3:37歳 境界型パーソナリティ障害・注意欠如多動性障害で当院心身医療科入院中,月経痛と月経前症候群のため当科紹介となった。桂枝茯苓丸と半夏厚朴湯の投与により徐々に改善した。精神疾患を有する患者の月経随伴症状の治療法として,証に応じた漢方療法は有用である。

  • 呉 明美, 白井 明子, 小川 恵子
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    癌患者の不眠は頻度の高い苦痛症状のひとつであり,特にベッド上臥床になりがちな進行癌患者においてしばしば昼夜逆転の睡眠障害がみられる。このような状態はますます患者本人の QOL の低下を招く可能性がある。今回,我々は入院加療中の進行癌患者の昼夜逆転睡眠障害と疼痛コントロールに漢方薬が有用であった症例を経験したので報告する。
    症例は53歳,女性で,全身転移のある頭頸部癌患者。入院加療中に昼夜逆転呈の睡眠障害が出現し,気鬱にて麻黄附子細辛湯と桂枝加竜骨牡蛎湯を処方したところ奏効した。また,その後茯苓飲合半夏厚朴湯,排膿散及湯の内服によりレスキューの使用頻度が減少し,疼痛コントロールとしても漢方薬が有効であった。

  • 福嶋 裕造, 藤田 良介
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    母指の手根中手関節症に対する治療は普通では消炎鎮痛の内服や外用薬,また固定療法が行われる。今回,3例の母指の手根中手関節症の患者に対して疎経活血湯が著効したので報告する。症例1は50歳女性,2は68歳男性,3は66歳女性であった。症例1,2は母指痛があり母指の手根中手関節症と診断して疎経活血湯を投与して著効した。 症例3は第2手根中手関節の痛風発作のため越婢加朮湯と大黄牡丹皮湯を投与して軽快したが,以前よりあった左母指の手根中手関節症が残存しており,疎経活血湯を投与して軽快した。痛風発作に対しては越婢加朮湯と大黄牡丹皮湯が有効であり,変形性関節症に対しては疎経活血湯が有効であった。同一症例でも他部位における他疾患では局所の症状は違っており,局所の微妙な証の違いがあると考えられた。

  • 蛯子 慶三, 伊藤 隆, 高田 久実子, 杉本 太郎, 藤川 太郎, 小山 雄太郎
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    症例は44歳,男性。主訴は術後性右顔面神経麻痺。良性耳下腺腫瘍(径6cm 大)を摘出する際,右顔面神経頬筋枝の分枝1本を犠牲にした。術直後より頬筋枝ならびに下顎縁枝の支配領域に顔面神経麻痺を発症し,術後5日目より鍼治療を開始した。主として麻痺側顔面部などに,長さ40mm,太さ0.16mm のディスポーザブル鍼を用いて5mm ほど刺入し,15分間の置鍼治療を週1回行った。その結果,早期に右耳周囲の違和感が軽減し,徐々に右顔面神経麻痺も回復して発症6ヵ月後には治癒に至った。鍼治療が術後の組織の瘢痕やひきつれなどの二次的変化を予防し,治癒を促進したと考えられた。頬筋枝が支配する領域の麻痺は神経切断部位より末梢で他の分枝から reroot して動くようになったことが推測された。鍼灸治療の適応を検討するうえでも貴重な症例と考えられた。

  • 辻 正徳, 地野 充時, 寺澤 捷年
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    桂枝人参湯は人参湯の裏寒に表証を兼ねていることを目標に使用されるが、血圧の改善に対する報告はない。今回我々は,桂枝人参湯を用いて血圧の改善を認めた2症例を経験した。1例はめまい,もう1例は下痢を主訴としており,2例とも心下痞鞕,心下の冷え,上熱下寒を伴っており,桂枝人参湯の投与により主訴の改善とともに血圧の低下を認めた。方証相対論の興味深い臨床経験であり,桂枝人参湯が証に従うと,血圧の改善に寄与する可能性が示唆された。

  • 丹村 敏則
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    バセドウ病のケースレポート:症例は76歳,女性。肝障害を伴うバセドウ病を発症直後に急性硬膜下出血で入院。 薬の副作用を考慮すると西洋医学的治療は困難であった。そこで,炙甘草湯を開始した。甲状腺ホルモン,TRAb,自覚症状はすべて改善した。心理的影響の大きい自覚症状も改善した。西洋医学的治療が困難な時に漢方薬が有効であることが示唆された。

短報
  • 福永 智栄, 岸野 大蔵, 薄木 成一郎, 岡田 直己, 岩田 健太郎, 西本 隆
    原稿種別: 短報
    2020 年 71 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/03
    ジャーナル フリー

    咳喘息は,慢性咳嗽の原因疾患として最も多く,喘息にも移行することもあることから,適切な治療介入が必要である。今回,一般的な薬物療法に抵抗を示し九味檳榔湯を追加投与することで症状の改善を認めた2症例を経験した。症例1は46才女性。乳がん術後のホルモン治療中の患者で,5年前より咳喘息となり薬物加療を行っていたが,症状悪化し,夜間も咳嗽が続き症状改善せず九味檳榔湯を使用したところ症状の改善を認めた。症例2は47才女性。出産を機に咳喘息を発症し,増悪軽快を繰り返していた。職場移動を機に増悪,薬物療法にても改善せず九味檳榔湯と半夏厚朴湯を内服,その後は九味檳榔湯のみで改善した。いずれも季節性を認めた。九味檳榔湯は,咳喘息の改善に寄与する可能性が示された。

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