日本東洋医学雑誌
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原著
  • —外来看護師が感じる対応困難の影響要因とその対処方法—
    小池 潤, 並木 隆雄, 藤田 尚, 岡本 英輝, 平崎 能郎, 杉森 裕樹
    原稿種別: 原著
    2020 年 71 巻 3 号 p. 185-192
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    漢方診療外来における電話相談に看護師が対応できる方法を明らかにするために,電話対応困難な点の実態調査を行った。電話対応の記述データから,看護師が1人で対応できなかった相談内容を抽出して分類した。対応困難の影響要因を明らかにし,対処方法を決めて実施した。1年後に電話対応の実態調査をそれ以前と比較検討した。
    看護師の対応が困難な電話相談は,「体調不良の相談」「処方された漢方薬についての質問」「患者の自己判断による報告や質問」「治療や入院について」の4つに分類された。漢方薬についての質問は「服薬継続」「飲み合わせ」であり,自己判断による報告は漢方薬の「減量」「変更」であった。医師と共に作成したガイドラインを導入した結果,外来看護師は受診患者から多い質問への対応が可能になった。1年後の対応困難件数は半数以下に減少し,初診後1週間以内の電話相談は無くなった。

臨床報告
  • 山本 昇伯
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    下腿皮膚潰瘍の原因の多くは静脈性の循環障害であるとされている。循環障害により血管透過性の亢進をきたし,創傷治癒が阻害され遷延化する症例も少なくない。症例は75歳の女性。外傷を機に下腿の皮膚潰瘍を発症した。西洋医学的な保存療法を施されたが潰瘍は拡大し,手術療法を勧められたため,保存的な治療を希望し漢方治療を開始した。初診時に防已黄耆湯,紫雲膏を投与したが変化を認めなかった。2週間後に越婢加朮湯エキス(加附子末)に転方したところ尿利が改善するとともに約2ヵ月で潰瘍は消失した。皮膚潰瘍には黄耆建中湯など補剤を用いることが多いが,循環障害が主因である本疾患には越婢加朮湯が有効な場合がある。

  • 椛島 浩明, 貝沼 茂三郎
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 198-203
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    味覚障害や口臭の主訴で来院する患者が増えている。これらの訴えの中で,血液生化学検査あるいは歯科的検査を行っても原因が明確にならない,いわゆる不定愁訴の状態だと考えられる患者がいる。今回,我々は心因性味覚障害や仮性口臭症という診断した患者に,漢方医学医的には気虚と診断し,いずれも背景にストレスが関与していると考え,補中益気湯を処方したところ,自覚症状の改善傾向が認められた。以上の結果より,補中益気湯は味覚障害や口臭などの口腔不定愁訴に関して,有効な治療薬の一つであることが示唆された。

  • 木瀬 英明
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 204-212
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    冬期になり下部尿路症状が悪化し,漢方薬を投与した患者40人の下部尿路症状と冷え症状の変化を検討した。評価は国際前立腺症状スコア,過活動膀胱症状スコア,冷え症状に対する問診で行った。治療前後における国際前立腺症状スコアの改善は30例(75.0%),過活動膀胱症状スコアは26例(65.0%)に改善を認め,夜間排尿回数は2.5回→2.0回と有意に低下した。また,冷え症状に関しては,29例中21例(72.5%)において改善を自覚した。冷え症状が改善した群は,非改善群に対して有意に過活動膀胱症状スコアが改善した。適切な漢方薬の投与は,冷え症状だけではなく,寒冷刺激による下部尿路症状も改善することができる有効な手段のひとつであると考えられた。

  • 中島 啓次, 藤田 正
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    我々は過去1年間に慢性坐骨神経痛患者に対して麻杏薏甘湯加味方(麻杏薏甘湯エキス剤7.5g+桂皮末1g+附子末0.5g~1.5g)を投与した14症例を検討した。その下肢痛を Numerical Rating Scale で評価した。有効症例は男性6例,女性5例の11例(79%)で平均年齢は69歳。無効症例は男性2例,女性1例の3例(21%)で平均年齢77歳であった。9例は麻杏薏甘湯加味方を処方する前にプレガバリンを投与されていたが無効であった。そのうち7例は麻杏薏甘湯加味方の方が有効であった。さらに有効症例11例中10例は1年間以上にわたり経過を観察することができた。1例は汗の副作用で中止したが,2例は麻杏薏甘湯加味方を中止しても完治した。2例は引き続き副作用なく服薬中である。5例は途中,麻杏薏甘湯を薏苡仁湯に変え,麻杏薏甘湯加桂皮附子にしたが,その効果に明らかな差は認められなかった。

  • 福嶋 裕造, 福嶋 寛子, 藤田 良介, 宮川 秀文, 橋本 篤徳
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    手指の指節間関節症にはヘバーデン結節およびブシャール結節が含まれる。ヘバーデン結節は手指の遠位指節間関節の変形性関節症であり,ブシャール結節は手指の近位指節間関節の変形性関節症である。今回,手指関節症に対して疎経活血湯を投与して急激な改善を認めた3症例を経験した。症例は全例女性である。症例1は58歳で主訴は左中指 DIP 関節痛でヘバーデン結節と診断した。症例2は60歳で主訴は左環指 DIP 関節痛でヘバーデン結節と診断した。症例3は37歳で主訴は右環指 PIP 関節痛でブシャール結節と診断した。全例に疎経活血湯エキスを投与し関節痛が改善した。疎経活血湯は軽症から中等度の骨関節脊椎の疼痛に対して,NSAIDs と同様に有用な可能性があると考えられた。

  • 福嶋 裕造, 福嶋 寛子, 藤田 良介, 宮川 秀文, 東儀 洋, 三橋 牧
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 224-227
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    手根管症候群は手根管部における正中神経の圧迫による手指の正中神経領域における痺れ感や疼痛や筋力低下を主症状とした一般的な疾患である。今回,手根管症候群の2症例に対して随証診断を行い,葛根湯を投与して疼痛や痺れ等の痛みが軽快した。症例は57歳女性,59歳男性であった。2例とも手の痺れ感や疼痛があり手根管症候群と診断して,葛根湯を投与して軽快している。症状が軽快しても正中神経の圧迫が残存していると考えられた全例に手術を勧めて,2例に対して手術的治療を施行した。手根管症候群に対する葛根湯による治療は標治的な治療であり手術までの痺れ感や疼痛の管理において有用であると考えられた。

  • 白井 明子, 有光 潤介, 小川 恵子
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 228-234
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    【目的】桂枝茯苓丸加薏苡仁は駆瘀血剤である桂枝茯苓丸に,利水・除痺痛・排膿作用のある薏苡仁を加味した方剤である。瘀血と水滞を病態とする諸症状に応用可能とされ,耳鳴症においても活用可能と考える。今回,耳鳴症への処方例について後方視的に検討する。
    【方法】平成25年10月から平成30年10月に当医院を受診し,漢方医学的診断に基づき桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方した耳鳴症9例の臨床像と経過について検討した。
    【結果】症例の内訳は男性/女性5/4,平均67歳(54—81歳,年齢中央値65歳),経過は治癒/改善/不変/悪化1/6/2/0であった。
    【考察】耳鳴症は瘀血と水滞により生じ得る。瘀血・水滞併存の際,桂枝茯苓丸加薏苡仁は単剤で治療可能であり,有効な処方になり得る。

  • 篁 武郎
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    症例は80歳女性。X—3年頃から月に2回ほど発作的に嘔吐と下痢が出現するようになった。発作は毎回午前11 時前後に生じ,20分ほど休息をとると自然に回復していた。他院での消化器系等の精査では異常は見られなかった。 X 年2月頃より発作が頻回化し,漢方薬による治療を開始した。胃気不足によって心下に停聚した飲を背景とする症状と診断して苓桂朮甘湯を処方したところ症状は改善傾向を示した。苓桂朮甘湯の守胃,利湿を主とする作用が奏功したと考察した。また心下飲の診断に心下痞鞕の所見が有効との報告があるが,飲による症状が出現している時のみ心下痞鞕を呈して,腹診時に必ずしもみられるとは限らないことが示唆された。

  • 原田 直之, 山本 佳乃子, 小暮 敏明
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    腰痛とそれに伴う下肢痛,しびれ感はしばしば難治性で日常生活動作の低下につながるため漢方治療の良い適応となっている。今回我々は,精神神経症状の有無にかかわらず柴胡加竜骨牡蠣湯が奏功した症例を複数経験したので報告する。症例は腰痛を主訴とし,下肢の痺れあるいは疼痛を伴う5例である。そのうち4例には精神神経症状はみられなかった。柴胡加竜骨牡蠣湯の投与によっていずれも2ないし4週間で疼痛の軽減と歩行距離の改善がみられ,鎮痛薬が不要となった。一般に,柴胡加竜骨牡蠣湯は精神神経症状を伴うものが適応とされるが,自覚的な症状がなくとも著効する場合があり,慢性疼痛による潜在性うつ状態を精神神経症状ととらえることで,腰痛緩和の鑑別処方になり得ると考える。

  • 及川 哲郎, 矢数 芳英, 渡邉 秀裕, 平山 陽示, 花輪 壽彦, 小田口 浩
    原稿種別: 臨床報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 246-250
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    症例1:28歳女性。3ヵ月前に心窩部痛と下痢が出現。その後も胃もたれや心窩部痛が続き,めまいや立ちくらみ,のぼせも自覚する。苓桂朮甘湯を服用,すぐ足が温まりめまいや立ちくらみが消失,2週間で消化管症状も軽快した。症例2:40歳女性。8ヵ月前に嘔気と心窩部痛が出現し改善しない。摂食時に咽から何かが上る感覚とめまいを生じる。苓桂朮甘湯を服用1週間で食欲,3週間で消化管症状が改善した。症例3:15歳女性。ジェットコースター乗車後に身体動揺感が生じ,嘔気,心窩部不快感,動悸,めまいや咽喉頭異常感が続く。苓桂朮甘湯加厚朴3g を1週間服用,身体動揺感や嘔気が改善した。症例4:28歳男性。1ヵ月前から疲れると胃がもたれ何も食べられず,立ちくらみも気になる。苓桂朮甘湯服用2週間で立ちくらみが消失,4週間で食欲も改善した。苓桂朮甘湯は気逆を伴う機能性ディスペプシアなどの上部消化管症状(水滞)に有用である。

調査報告
  • 山下 仁
    原稿種別: 調査報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 251-261
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    茨城県内原の満蒙開拓青少年義勇軍訓練所(1938~1945年)に設置されていた「一気寮」は国家プロジェクトの一部に組み込まれた灸療所であり日本の近代医史学的に稀有な存在であるため,設置の背景や活動の実態などについて,文献収集,インタビュー,現地訪問などにより情報を集約した。
    加藤完治所長の理解の下で代田文誌と田中恭平の提案により設置された一気寮は,灸療の臨床と訓練を担っていた。現存する臨床データや記録から,訓練生の健康増進と一部の疾病治療(夜尿症および結核疑い者ほか)において良好な臨床成果を挙げていたことが窺われる。一方,収集した情報からは位置的・組織的・心理的に増健部の他部署と一定の距離があることが推察された。灸療に期待される役割は時代とともに変容したが,医療手段の多様性,汎用性,補完性,持続可能性などを考える上で一気寮の発想と活動内容は今日においても示唆に富んでいる。

  • ~日本東洋医学会医療安全委員会活動報告(2019)~
    地野 充時, 牧野 利明, 関根 麻理子, 田中 耕一郎, 嶋田 沙織, 平崎 能郎, 四日 順子, 乗次 瑞穂, 古屋 英治, 田原 英一
    原稿種別: 調査報告
    2020 年 71 巻 3 号 p. 262-267
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    日本東洋医学会は,2017年に医療安全委員会を新設した。当委員会の最初の活動は,漢方薬の副作用についてまとめ,学会員に広く啓蒙することであった。本稿においては,漢方薬の代表的な副作用である,偽アルドステロン症,薬物性肝障害,薬物性肺炎に関する,現時点で念頭に置くべき知見について記載した。これら漢方薬の三大副作用は,いずれも臨床的に重篤な病態を引き起こす可能性があり,早期に発見し,適切に対処することが非常に重要である。そのためには,漢方薬を服用している時には,適切な時期に適切な検査を行うことが必要である。

短報
総説
  • 入江 康仁, 中永 士師明
    原稿種別: 総説
    2020 年 71 巻 3 号 p. 272-283
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    世界的な流行を呈している新型コロナウイルスに対して,世界中でその対策が進められている。人工呼吸器や体外式膜型人工肺の導入が行われ,また抗ウイルス薬の投与なども試みられている。しかし,現在のような情勢の中で,エビデンスのある有効な治療を待つわけにもいかず,日々対応していかなくてはならないのもまた事実である。 抗ウイルス薬はもちろん,抗菌薬や人工呼吸器などの医療器具のなかったスペインかぜ流行当時,本邦の先人たちがどのような診療をしたのかを顧みることは大変参考になる。本稿はスペインかぜに対して漢方薬を駆使して患者を治療した事実と,現在明らかとなったスペインかぜの高病原性,抗ウイルス薬の作用機序と臨床エビデンスを示しながら,ウイルス感染症のパンデミックに対する対策の一つとして臨床上も比較的安全であり,副作用も少なく,自己免疫賦活作用による抗ウイルス作用を期待できる漢方薬の役割を提言するものである。

論説
  • 小田口 浩, 石毛 達也, 伊藤 雄一, 若杉 安希乃, 関根 麻理子, 花輪 壽彦, 並木 隆雄, 村松 慎一, 新井 信, 三潴 忠道, ...
    原稿種別: 論説
    2020 年 71 巻 3 号 p. 284-295
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    我々は漢方診断ロジックの形式知化を図ることを目的とした臨床データ集積研究を計画しているが,計画段階において,研究対象となる漢方方剤の数の多さ,漢方方剤の内容についての施設間差,所見の採取方法や有効性の評価の施設間・個人間差が課題となった。今回,これらの課題を研究メンバーである全参加施設で議論し,合意形成による解決を試みた。
    方法は,解決すべき各課題について合意形成会議を積み重ねて全員一致で結論を得る方式とした。その結果,以下の結論が得られた。まず形式知化の対象として33個の漢方方剤が選択された。また,各漢方方剤の構成生薬などの範囲が定められた。さらに漢方医学的所見の項目とその判断基準が定められた。そして,有効性・安全性の判断基準が決定された。
    漢方臨床研究に当たって解決すべき諸課題について,合意による解決案を提示した。今回の結果が今後漢方研究手法を議論する土台となることを期待する。

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