日本東洋医学雑誌
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臨床報告
大青竜湯がアトピー性皮膚炎に奏効した1例
望月 良子及川 哲郎村主 明彦花輪 壽彦
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2009 年 60 巻 6 号 p. 629-633

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抄録

喘息の既往がある31歳,女性。幼小時より認めるアトピー性皮膚炎が悪化し,激しい痒みを自覚し,それと共に気管支喘息の悪化も認めたことから,当研究所漢方外来を受診。汗をかかないことから「表実」,のどの渇きや気管支喘息の既往より「裏の熱と水」,激しい痒みを「煩躁」ととらえ,発汗・清熱を目標に大青竜湯を処方した。気管支喘息の軽快とともに皮膚症状も安定し,激しかった掻破が少なくなり,約26週で症状はほぼ改善した。本症例の特徴の一つは,『激しい瘙痒感』を「煩躁」ととらえたところにある。この解釈により,アトピー性皮膚炎に限らず,痒みが激しい皮膚疾患における大青竜湯の応用はさらに広がるのではないかと考える。麻黄の使用量が多いことから,循環器疾患の既往がない事など既往歴の注意は必要であるが,これまでの報告例を含め検討しても,比較的若年者で実証の患者には他の方剤と同様,長期に投与することは可能であると考える。

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© 2009 一般社団法人 日本東洋医学会
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