日本東洋医学雑誌
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原著
当院の随証治療における甘草および黄芩による副作用の臨床的特徴
伊藤 隆菅生 昌高千々岩 武陽仙田 晶子王子 剛海老澤 茂大川原 健
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2010 年 61 巻 3 号 p. 299-307

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抄録

患者2530例に対する随証漢方治療の副作用を調査した。503例に569件の味の苦情を含む副作用がみられた。甘草含有方剤は2139例に投与され64例(3.0%)に副作用を認めた。年齢は63.4±13.8歳で全体の54.9±18.1歳より高かった。診断の契機となった症候は,血圧上昇45例,浮腫16例であり,低カリウム血症は5例と少なかった。甘草投与量は,34例にはエキスで2.0±1.0(Mean±SD)g/日,29例には煎薬で2.2±1.1g/日であった。両群の投与期間と回復期間に差はなかった。黄芩含有方剤は1328例に投与され13例(1.0%)で肝機能障害を認めた。黄芩は7例にはエキスで2.3±0.5g/日,6例には煎薬で2.8±0.8g/日が投与されていた。投与期間に有意差はなかったが,回復期間はエキス群69.0±52.5日が,煎薬群22.7±16.0日より長かった。副作用例の大部分で初診時の症状の改善は得ており,当初は証に合っていたと思われる。随証治療においても注意する必要がある。

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© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
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