当帰芍薬散は婦人科疾患を中心に幅広く応用されるが,男性での有効例の報告は殆どない。今回我々は,当帰芍薬散料が有効であった男性の4症例を経験した。症例1は84歳,冷えや瘀血所見を伴うコントロール不良な鼻アレルギー症例に,本方加味が有効であった。症例2は63歳,主訴は気管支喘息,前立腺肥大症,鼻アレルギー。麻黄剤が使用しにくい高齢者の鼻アレルギーなど諸症状に対して,本方と半夏厚朴湯の合方が有効であった。症例3は70歳,主訴は尿蛋白持続陽性。冷え,瘀血,水滞を目標とし,本方加味により4カ月後尿蛋白が陰性化した。症例4は56歳,潰瘍性大腸炎に対し胃風湯加味が有効であったが,経過中血圧上昇を認めた。甘草が入らず構成生薬の類似した本方加味に転方,以後血圧や腹部症状が安定した。吉益南涯は,男性における当帰芍薬散の使用経験を記した。当帰芍薬散の男性症例を検討することで,より応用範囲が広がる可能性がある。