2012 年 63 巻 1 号 p. 37-40
平成23年(2011年)東日本大震災を契機に揺れ感を強く訴える患者15例についての治療を経験した。半夏厚朴湯の有効例が12例,半夏厚朴湯が無効で半夏白朮天麻湯が有効であった症例が2例,苓桂朮甘湯が有効な症例が1例であった。
半夏厚朴湯の有効例では,揺れ感のほかに不安感を訴える患者が多かった。一方,半夏厚朴湯が無効で半夏白朮天麻湯が有効であった症例では,不安感の訴えはなく,回転性のめまいや胃もたれを伴う胃腸虚弱の傾向を認めた。
また,腹診では,半夏厚朴湯の有効例では,心下痞鞕がみられた患者が多かった。揺れ感の改善に伴い心下痞鞕は軽快した。
今回の検討例から,震災後に揺れ感のほかに不安感を訴え,腹診では心下痞鞕がみられた患者に対して,半夏厚朴湯が有効である可能性が高いと考えられた。