日本東洋医学雑誌
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臨床報告
幽門狭窄症に伴う反復性の嘔吐症に対し五苓散が有効であった一症例
松井 龍吉山口 拓也小林 祥泰長井 篤山口 修平
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2012 年 63 巻 6 号 p. 378-383

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抄録

幽門狭窄症により,嘔吐症を繰り返す症例に対し五苓散を投与したところ,症状の改善とこの時合併していたうっ血性心不全の著明な改善を認めた症例を経験したので報告する。
症例は78歳女性。脳梗塞後遺症などにて寝たきりの状態にあり,経鼻経管栄養が行われていた。しばしば反復性の嘔吐を生じ,これによると考えられる肺炎を繰り返していた。反復する嘔吐症状について精査を行ったところ,幽門部に瘢痕性狭窄が見られ,内視鏡的にバルーンによる拡張術を行った。しかし症状の改善は見られず,その後心不全の悪化も見られた。このため五苓散を投与したところ,狭窄性病変に変化はなかったが,嘔吐症状は見られなくなり,心不全症状も改善した。五苓散は急性疾患において利水作用を示す方剤とされ,消化管での水分吸収などを是正する作用を持つとされている。本症例においても五苓散が諸症状の改善に有効であったと考えられた。

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© 2012 一般社団法人 日本東洋医学会
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