2013 年 64 巻 4 号 p. 227-230
症例は37歳の女性。半年前のオステオパシー施術後からの無月経を主訴に当院漢方クリニックを受診した。首から腰にかけての背部痛,頸椎・肩・手・膝・足関節のクリック,筋肉のこわばりを伴ったが,日常生活は送れていた。発病前の月経周期には異常なく,産婦人科,整形外科では異常所見を認めなかった。中間証,寒証で疼痛に伴う気うつによる症状と捉え,鳥薬順気散料去白姜蚕加附子(煎じ)を開始した。1ヵ月後に関節症状や冷えが軽快し,3ヵ月後に月経が再開した。烏薬順気散の原典にある婦人血風は,古典の記載から無月経と解釈しうる。漢方医学において,無月経に対する気うつの関与が指摘されてはいるが,一般的には血の症状と考えられ,補血薬や駆瘀血薬を用いることが多い。続発性無月経の病態には血の異常だけでなく,気の異常が密接に関係しており,気剤も治療の重要な選択肢となりうることが再確認された。