漢方医学的診断の基礎となる漢方医学的所見の平準化は重要な課題である。しかし現状では,漢方医学的所見の判断基準や採取方法は多様で,最終的な採取結果にばらつきが生じている。
我々は施設内で漢方医学的所見の平準化を図る試みを実施しているので紹介する。まず我々が着手したのは言葉による平準化である。施設内の漢方指導医・専門医9名の合議により,問診上の自覚症状・他覚所見(舌診,脈診,腹診)の各々について,対象項目の選択,対象項目の判断基準,付随事項に関する決定を行った。決定に当たっては,主要な古典の記載を重視すること,現代の一般臨床家に受け入れられやすい内容にすること,判断基準を明確にすることに留意した。
問診上の自覚症状は120項目を選択した。他覚所見は,舌診所見12項目,脈診所見6項目,腹診所見10項目を選択し,それぞれについて判断基準を定めた。
今後は漢方医学界全体での平準化が議論となることを期待している。