2014 年 65 巻 2 号 p. 124-137
身体的な「美」を創出する方法の一つとして,顔面局所の物理的鍼灸刺激による,皮膚の環境改善を主流とした美容鍼灸が注目されている。しかし,従来から行われてきた美容鍼灸は,顔面皮下の出血等々のリスクにより,最近では全人的に身体を観察して施術する方向へと変わりつつある。医書『黄帝内経霊枢』には体表部の肌色や艶,また,肌の弾力性が,身体内部の気血や蔵府また経絡と繋がり,体内の異常が体表部へと反映する法則性が随所に記されていた。即ち,心身の乱れが体表面の血色や容貌,体形の「美」へと波及するという概念である。よって『霊枢』には「美」を創出するための羅針盤の一つとしてその役割を果たすことができるように思われ,従来から局所を主とする「美容鍼灸」とは別に,哲学と医学の共生による「鍼灸美容」の二極化に対する身心への美容研究が,今後,望まれることが示唆された。