日本東洋医学雑誌
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臨床報告
梅雨時に発症する手足の痛みに白朮附子湯が著効した一症例
森 裕紀子鈴木 邦彦及川 哲郎花輪 壽彦
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2015 年 66 巻 3 号 p. 250-255

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抄録

白朮附子湯は『傷寒論』に「風湿相摶身體疼煩」1)と記載があるが報告は少ない。今回梅雨時に発症した四肢の痛みの再発例に対して白朮附子湯が著効した症例を経験した。症例は45歳女性。X-1年6月に,両手足の痛みとしびれが出現し暖まると痛みは改善し,疲れると痛みは増し筋肉痛のようなだるさがある。1年半前に同じ症状で主に駆瘀血薬を1年間服用し症状が消失していた。前回同様に瘀血所見が強く駆瘀血薬を処方したが症状は消失しなかった。以前の痛みの発症も梅雨時だったことに注目し,表湿に冷風が加わり生じた痛みと考え白朮附子湯に転方したところ2週で痛みは消失した。翌年6月も痛みが再発し白朮附子湯を処方し11日で治癒した。痛みの性質と発症時期から初診時の痛みも湿による痛みだったと推測する。梅雨時に発症する痛みは,冷房設備の整った環境で生活する現代において今後増える病態であり,白朮附子湯は考慮すべき処方の1つである。

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© 2015 一般社団法人 日本東洋医学会
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