日本東洋医学雑誌
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基礎報告
宋代の煮散法にヒントを得た簡便かつ成分抽出効率良好な煎薬調製法の開発(第2報)
—生薬残渣の簡便な分離法—
笛木 司牧野 利明松岡 尚則別府 正志須永 隆夫田中 耕一郎並木 隆雄
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2016 年 67 巻 2 号 p. 114-122

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抄録

簡便かつ抽出効率に優れた煎じ薬の調製法の開発を目的として,中国宋代の「煮散法」を参考に,粉末生薬を熱湯に浸漬して成分抽出を行う「IPCD(immersing powdered crude drugs)法」を試みる中,課題であった浸漬液と泥状生薬残渣の分離法を検討した。マオウ末を不織布パックに封入して熱湯浸漬した場合,そのまま熱湯中に分散させて抽出した場合に比べ,指標成分の浸漬液への移行量が著しく減少し,不織布パックの使用がIPCD 法に不適であることが示された。簡便で効率的な分離法を求め,市販のワインカラフェを用いたデカンテーションを試みたところ,実験を行った7処方中6処方について,刻み生薬を茶漉しで濾別する場合の80%前後の浸漬液が回収された。以上のことから,IPCD 法における固液分離は,ワインカラフェを用いたデカンテーション法を用いることで実用に足ることが示された。

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© 2016 一般社団法人 日本東洋医学会
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