日本東洋医学雑誌
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臨床報告
難治性下腿潰瘍に越婢加朮湯と紫雲膏が有効であった一例
山本 昇伯
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2020 年 71 巻 3 号 p. 193-197

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抄録

下腿皮膚潰瘍の原因の多くは静脈性の循環障害であるとされている。循環障害により血管透過性の亢進をきたし,創傷治癒が阻害され遷延化する症例も少なくない。症例は75歳の女性。外傷を機に下腿の皮膚潰瘍を発症した。西洋医学的な保存療法を施されたが潰瘍は拡大し,手術療法を勧められたため,保存的な治療を希望し漢方治療を開始した。初診時に防已黄耆湯,紫雲膏を投与したが変化を認めなかった。2週間後に越婢加朮湯エキス(加附子末)に転方したところ尿利が改善するとともに約2ヵ月で潰瘍は消失した。皮膚潰瘍には黄耆建中湯など補剤を用いることが多いが,循環障害が主因である本疾患には越婢加朮湯が有効な場合がある。

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© 2020 一般社団法人 日本東洋医学会
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