2020 年 71 巻 4 号 p. 371-377
【緒言】放射線性直腸炎に対し漢方治療を行い良好な経過を辿った症例を経験したので報告する。【症例】57歳女性,子宮体癌術後再発に対する組織内照射後。主訴:肛門部痛。現病歴:腟前壁再発に対する組織内照射の9ヵ月後,肛門痛が出現し,臨床および検査から放射線直腸炎と診断された。粗大潰瘍のため直腸腟瘻形成が危惧され人工肛門造設も提示したが漢方治療を希望された。【経過】瘀血があり桂枝茯苓丸加薏苡仁で治療開始した後,肛門痛増強と出血があり紫雲膏注腸を開始した。下血が増加し芎帰膠艾湯,酸化マグネシウムを追加した。直腸潰瘍への紫雲膏塗布を開始後,次第に肛門部痛と下血が改善しMRI,内視鏡所見も改善した。【考察】本症例では紫雲膏の注腸/塗布開始から症状が改善しており,紫雲膏が有効であった。放射線直腸炎に対する治療の中で組織修復能力を有する治療は少なく,修復促進能力を有する漢方治療は検討に値する。