日本東洋医学雑誌
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臨床報告
八味地黄丸が奏効した拍動性耳鳴の2例
平澤 一浩塚原 清彰
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2023 年 74 巻 3 号 p. 223-227

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抄録

拍動性耳鳴は頸部,頭蓋底,側頭骨領域の血管内腔で発生した乱流に起因する。今回,頸動脈狭窄が原因と考えられた拍動性耳鳴に対して,八味地黄丸が奏効した2例を経験した。症例1は77歳男性。10年以上前から左拍動性耳鳴を自覚し,当科を受診した。超音波検査で左頸動脈に56%の狭窄を認め,これが原因と考えた。腎陽虚の所見を認め,八味地黄丸を投与したところ,12週後に症状は消失した。症例2は86歳男性。1年前から左拍動性耳鳴を自覚し,当科を受診した。他院で左頸動脈の70%程度の狭窄を指摘されており,これが原因と考えた。腎陽虚の所見を認め,八味地黄丸を投与したところ,16週後には1 / 4程度に改善した。動脈硬化に伴う頸動脈狭窄による拍動性耳鳴も,加齢性の内耳性耳鳴と同様に,腎虚ととらえ治療可能な例があると考えられた。

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