日本東洋医学雑誌
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下肢細絡に対する当帰芍薬散の効果
坂井 利行
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1986 年 37 巻 2 号 p. 117-121

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抄録

当帰芍薬散は『金匱要略』に示されているごとく, 元来婦人の種々の腹痛を治するもので, その運用はきわめて狭い範囲に限定されていたが, その後の知見等から諸疾患に広く応用されてきたことを知りうる。今回, 下肢細絡・冷感を主訴とする14症例 (男・女各7例) に対し, 当帰芍薬散 (7.5g/日, 4週間以上投与) の効果を検討した。弁証上, 〓血証を呈するもの7例, 疑われるもの3例, 明らかでないもの4例であった。細絡に対して有効10例, 無効4例, 冷えに対して有効8例, 無効6例という結果が得られ, 中でも血虚・水毒を伴った〓血証において細絡は軽減しやすい傾向にあった。しかし, 〓血証等明らかな弁証に欠ける症例においても, 細絡に対する効果は軽度ながら認められた。これは本方のもつ末梢血管拡張作用, 利尿作用および抗炎症作用等によるところが大きく, 本方にはある程度一定した微小循環改善作用が期待できる。

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